連署

連署（れんしょ）についての解説

連署は鎌倉幕府において執権を補佐する重要な役職で、実質的には「副執権」ともいえます。この職名は、幕府の公式文書に執権と共に署名を行う風習に由来します。連署制度は、執権複数制とも呼ばれ、執権に次ぐ重職として位置付けられています。

連署の設立経緯

連署の制度が初めて設置されたのは嘉禄元年（1225年）、北条泰時が北条時房を任命したのがきっかけとされています。一部の歴史家によれば、この役職は貞応3年（1224年）に北条政子の提案によって設立されたとされ、長い間信じられていました。しかし、最近の研究により、実際には政子の死後に設立された可能性が高いとされています。

上横手雅敬氏によると、連署の設置は泰時の権限を強化するためのものであり、歴史的文献からもその証拠が見つかっています。具体的には、嘉禄元年（1225年）6月15日までの間は、泰時が単独で様々な公文書に署名しており、時房が泰時と連名で文書に署名するのは、その後のことでした。最初の連署である時房は、当初は「執権」として扱われ、鎌倉幕府における「両執権体制」が形成されていきました。

この制度は表面的には執権同士の平等を象徴していましたが、実際には泰時がより大きな権限を持っていました。泰時の特徴としては、合議制を重んじる姿勢があり、時房と共に執権としての責務を果たすことで、権力の均衡を保っていました。

歴代の連署

連署の職は、通常北条氏一門の有力な者によって占められました。以下に歴代の連署を示します。

• - 北条時房: 貞応3年（1224年）6月28日または嘉禄元年（1225年）6月15日以降～仁治元年（1240年）1月24日 〈得宗家〉
• - 北条重時: 宝治元年（1247年）7月27日～康元元年（1256年）3月11日 〈得宗家、極楽寺流祖〉
• - 北条政村: 康元元年（1256年）3月30日～文永元年（1264年）8月11日 〈得宗家、政村流祖〉→執権→連署再任。
• - 北条時宗: 文永元年（1264年）8月11日～文永5年（1268年）3月5日 〈得宗〉→執権
• - 北条義政: 文永10年（1273年）6月17日～建治3年（1277年）4月4日 〈極楽寺流、塩田流祖〉
• - 北条業時: 弘安6年（1283年）4月16日～弘安10年（1287年）6月18日 〈極楽寺流、普恩寺流祖〉
• - 大仏宣時: 弘安10年（1287年）8月19日～正安3年（1301年）8月23日 〈大仏流〉
• - 北条時村: 正安3年（1301年）8月23日～嘉元3年（1305年）4月23日 〈政村流〉
• - 大仏宗宣: 嘉元3年（1305年）7月22日～応長元年（1311年）10月3日 〈大仏流〉→執権
• - 北条煕時: 応長元年（1311年）10月3日～正和元年（1312年）6月2日 〈政村流〉→執権
• - 金沢貞顕: 正和4年（1315年）7月12日～嘉暦元年（1326年）3月16日 〈金沢流〉→執権
• - 北条維貞: 嘉暦元年（1326年）4月24日～嘉暦2年（1327年）9月7日 〈大仏流〉
• - 北条茂時: 元徳2年（1330年）7月9日～元弘3年（1333年）5月22日 〈政村流〉　鎌倉幕府滅亡。

連署の影響とその後

連署の役職が幕府内で重要視されていたことは、地元の有力豪族が連署の死去に際して鎌倉に弔慰のために訪れる慣行からもうかがえます。幕末の政局においても、連署の権力が強く影響していました。

鎌倉幕府の崩壊後、連署という肩書は次第に姿を消しましたが、代わりに加判や加判衆などの名称で本署の責任者の隣に署名する者が存在していました。連署の制度は、鎌倉幕府の政体における重要な柱となり、歴史に名を残すことになりました。

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