伊賀の方

伊賀の方（いがのかた）

伊賀の方（生没年未詳）は、鎌倉時代初期に生きた女性です。伊賀氏とも、伊賀局とも呼ばれました。彼女は、藤原秀郷の流れを汲む武将で、鎌倉幕府の御家人であった伊賀朝光の娘として生まれました。母は政所別当を務めた二階堂行政の娘であり、兄弟には光季や光宗がいました。

彼女は、鎌倉幕府2代執権である北条義時の後妻となり、7代執権となる政村をはじめ、実泰、そして一条実雅の妻（後に唐橋通時の妻）など多くの子をもうけました。

生涯

建仁3年（1203年）9月に比企能員の変が起こると、義時は前妻である姫の前と離縁し、その後、伊賀の方が継室として迎えられたと考えられています。元久2年（1205年）には政村を、承元2年（1208年）には実泰を出産しました。また、年月は不明ながら、一条実雅に嫁いだ娘もいます。承久3年（1221年）と貞応元年（1222年）にもそれぞれ女子と男子を出産しています。

父である朝光は建保3年（1215年）に、母は建保5年（1217年）に京で亡くなっています。

貞応3年（1224年）7月、夫である義時が急逝します。藤原定家の『明月記』によると、義時の死から3年後、承久の乱の首謀者の一人として逃亡していた一条尊長が捕らえられ、尋問中に義時の妻が毒を盛ったと訴えました。この発言から、義時毒殺説が浮上しました。

しかし、山本みなみは、義時の四十九日法要の表白に脚気と暑気あたりによる衰弱が記されていることを指摘し、病死説を主張しています。尊長と実雅は承久の乱で敵味方に分かれており、伊賀の方の兄は京方として討たれているため、両者の連携は考えにくいとしています。呉座勇一も、当時の年齢から見て義時の死は不自然ではないとしています。

義時の死後、伊賀の方は兄である光宗と共謀し、実子の政村を執権に、娘婿の一条実雅を将軍に擁立しようと画策しました。しかし、鎌倉殿後見の北条政子が、義時の後継に異母兄である泰時を指名したため、この計画は失敗に終わります。伊賀の方、光宗、実雅らは流罪となり（伊賀氏事件）、失脚しました。

もっとも、泰時自身が伊賀氏の謀反を否定しており、『吾妻鏡』にも伊賀氏が謀反を企てたという記述はありません。そのため、伊賀氏事件は、北条家の代替わりによる影響力低下を恐れた政子が、伊賀の方の一族を排除するために仕組んだ事件であるという説も存在します。北条家の家督問題は本来、義時の後家である伊賀の方が中心となって解決すべき問題であり、政子の介入は不当であったとする見方もあります。

8月29日、伊賀の方は政子の命により伊豆北条へ配流され、幽閉されました。その4か月後の12月24日、危篤の知らせが鎌倉に届き、その後亡くなったと推測されています。一方で、嘉禄元年（1225年）7月の政子の死後、嘉禄3年（1227年）に実雅の妻の妹が京で公家の西園寺実有と結婚しており、その前年にその母が入京していることから、その母を伊賀の方とする見解もあります。また実雅の妻は嘉禄元年（1225年）11月以降に公家の唐橋通時と再婚しています。政村は事件に連座せず、後に7代執権となっています。

関連作品

テレビドラマ
鎌倉殿の13人（2022年、NHK大河ドラマ） - 演：菊地凛子、役名：のえ

関連項目

* 伊賀氏事件

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