北欧の政治

北欧の政治体制は、議会制民主主義を基盤とし、単一国家として構成されています。しかし、他の先進国と比較して、基礎自治体（フリーコミューン）への地方分権が顕著に進んでいる点が特徴です。

経済システムとしては、ノルディックモデルが採用され、高負担高福祉の福祉国家が実現されています。

北欧諸国の共通項

政党

かつての北欧の政党制は、保守・リベラル・農民・社会民主・共産の五党制が一般的でした。しかし近年では、保守・キリスト教・リベラル・農民・社会民主に加えて、新たな勢力が台頭しつつあります。この変化は、伝統的な身分制議会からの流れを汲むものと解釈することもできます。

政府

選挙制度: 比例代表制、一院制
選挙権・被選挙権: 18歳以上
* 任期: 4年

選挙では、大きな政府陣営（共産主義政党、社会民主主義政党）と小さな政府陣営（自由主義政党、重農主義政党、保守主義政党）の対立が軸となります。しかし、オイルショック以降は環境政党などが台頭し、ソビエト連邦崩壊後は共産主義政党が党名変更する動きも見られました。

単独で過半数を制する政党が少ないため、常時連立政権が組まれます。政権争いでは二つの陣営に分かれるものの、実際の政権運営は陣営を超えた中道政党（社会民主主義政党、自由主義政党、重農主義政党）が中心となる傾向があります。この中道政党による政策連合が、赤緑連合（赤土連合あるいは赤白連合）として知られています。北欧の福祉国家は、労働組合だけでなく、自営業者、ホワイトカラー、農家など、幅広い層の支持によって成立しているのです。

裁判制度

多くの先進国と同様に三審制を採用しています。ただし、ヨーロッパ諸国に一般的な憲法裁判所は存在せず、違憲立法審査権は通常裁判所が有しています。

地方自治

フリーコミューンと呼ばれる基礎自治体が広範な予算執行権を持つ点が特徴です。多くの先進国では、都道府県や州のような広域自治体の権限が強いのに対し、北欧諸国では基礎自治体に権限が委譲されています（オーランド諸島、グリーンランド、フェロー諸島は例外）。また、自治体への交付金の用途は、基礎自治体が自由に決定できます。

地方自治における外国人参政権を選挙権、被選挙権の両方で認めていることも特徴です。

圧力団体

労働組合が圧倒的な力を持っており、社会民主主義政党の優位性を支えています。社会民主主義政党は、福祉国家の政策の中に労働組合の組織率を高める仕組みを組み込んでおり、その組織率の高さが労働組合の政治力の源泉となっています。豊かな自然を背景に農業、林業、水産業が盛んで、重農主義政党の支持基盤となっています。

経営者団体は労働組合に対抗するため一元化されています。教会の政治的発言力は弱体で、経営者団体と農民層との連携の障害となっています。労使の組織団体が高度に集権化されており、政労使の交渉の場を形作っています。これが北欧諸国特有のネオ・コーポラティズムです。

各国の政治

本記事では、上記以外にアイスランド、オーランド諸島、グリーンランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、フェロー諸島の政治について解説しています。

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