北海道高速鉄道開発

北海道高速鉄道開発株式会社

北海道札幌市中央区に本社を構える北海道高速鉄道開発株式会社は、北海道や一部沿線自治体、北海道旅客鉄道（JR北海道）が出資する第三セクター方式の企業です。主な役割は、道内における鉄道インフラの改良促進や新型車両の導入を支援することにあり、具体的には線路設備や一部車両を保有し、これをJR北海道に貸し付ける形で鉄道サービスの向上と安定運行に貢献しています。

設立経緯と初期の取り組み

会社のルーツは、1993年に釧路市からの要望を受けて国の「幹線鉄道等活性化事業」に位置づけられた、石勝線および根室本線の高速化プロジェクトに始まります。この大規模事業を実施する主体として、1994年1月、当時の運輸省の認定の下、北海道、釧路市、沿線自治体の一部、そしてJR北海道の共同出資により、「道東高速鉄道開発株式会社」が設立されました。同社は、石勝線の南千歳駅から上落合信号場を経て、根室本線の釧路駅までの区間（上落合-新得間は石勝線との重複区間）で、より高速な列車運行を可能にするための地上設備改良工事を進めました。完成した設備は同社が所有権を持ち、JR北海道へ貸与する形がとられましたが、これは第三種鉄道事業者に該当するものではありませんでした。この取り組みの成果として、1997年3月22日には新型特急車両キハ283系を投入した「スーパーおおぞら」がデビューし、所要時間の短縮が図られました。さらに2000年3月11日には、「スーパーとかち」に使用される車両もキハ283系に統一されました。

改組と宗谷本線の高速化

道東高速鉄道開発は、宗谷本線の高速化事業が1997年に国の幹線鉄道等活性化事業として認定されたことを受け、同年9月16日に現在の「北海道高速鉄道開発株式会社」へと改組されました。この組織再編には、出資者として新たに士別市と名寄市が加わっています。宗谷本線の高速化事業は、旭川駅から名寄駅までの区間を対象とし、石勝・根室本線の事例と同様に、同社が地上設備の改良工事を行い、完成した設備をJR北海道に貸し出す方式が採用されました。しかし、この区間の旅客需要特性を考慮し、高速化に合わせて投入される新型車両キハ261系についても、同社が購入・保有し、JR北海道に貸与する異例の措置が取られました。この取り組みにより、2000年3月11日には特急「スーパー宗谷」の運行が始まりました。当初、「スーパー宗谷」は利用が好調で、使用されるキハ261系3編成が予備車なしでフル稼働する状況が続いたため、JR北海道が自社費用で2両を増備する事態も発生しました。しかし、その後はキハ183系といった古い形式車両の老朽化や、それに伴う全体的な車両運用の見直しから、2017年3月4日のダイヤ改正で一部の特急列車が旭川止まりとなり、「宗谷」（札幌-稚内直通）と「サロベツ」（旭川-稚内間）に列車系統が再編されています。

その他の事業

札沼線（学園都市線）電化事業: 札幌圏に残る唯一の非電化区間であった札沼線（学園都市線）のうち、沿線の宅地開発が進み利用者増加が顕著であった桑園駅から北海道医療大学駅までの区間について、サービス向上、環境負荷低減、経営効率化を目指す交流電化が国の幹線鉄道等活性化事業として認定されました。北海道高速鉄道開発はこの区間の電化工事を2009年度から2011年度にかけて実施し、2012年6月1日に電化開業を実現しました。この工事費用には国と自治体からそれぞれ対象事業費の20%の補助金が充てられています。完成した電化設備も同社が保有し、JR北海道に有償で貸し付けられています。
観光列車等導入支援事業: JR北海道が保有するリゾート車両の老朽化に対応するため、北海道と国（鉄道・運輸機構）が共同で進める「鉄道車両の快適性・利便性の向上を図る観光列車等の導入への支援」事業にも参画しています。この事業において同社は、キハ261系5000番台「ラベンダー」編成や、観光目的での利用も可能なH100形ディーゼルカーの一部などを車両メーカーから直接購入して保有し、JR北海道に無償で貸与する形で車両導入を支援しています。これらの車両購入にかかる費用は北海道と国が折半して負担しており、同社保有の車両導入に関するJR北海道のプレスリリースでは、同社への謝意が表明されることが一般的です。

保有設備が関連する課題

北海道高速鉄道開発が高速化工事によって線路設備を保有する区間の一部、特に根室本線の帯広～釧路間および宗谷本線の旭川～名寄間は、2016年11月18日にJR北海道が発表した資料によると、年間50億円を超える営業損失を計上しており、JR北海道単独で将来にわたって「安全な鉄道サービス」を維持していくことが困難であるとされています。当面はJR北海道が維持を継続する方針ですが、持続可能な維持管理体制を構築するため、北海道高速鉄道開発との連携を含めた検討が必要な「北海道高速鉄道開発株式会社関連線区」として位置づけられており、同社が担うインフラ保有という役割が、地方交通線の維持問題とも深く関わっている現状が示されています。

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