北郷久定

北郷久定（ほんごう ひさただ）は、江戸時代前期に活躍した薩摩藩の武士であり、都城私領を治める北郷家の16代目当主を務めた人物です。彼は、薩摩藩の2代藩主である島津光久の次男として、正保元年（1644年）に鹿児島で誕生しました。

北郷家では、先代当主の北郷久直が寛永18年（1641年）に25歳という若さで亡くなった際、後継となる男子がいませんでした。そのため、北郷家は一時的に当主不在の状態となりました。この間、久直の夫人（北郷家12代当主である北郷忠能の娘で、法号を「春嶺良仲大姉」という）が、家老たちの補佐を受けながら、明暦2年（1656年）までの16年間、都城の政治を担っていたとされています。

久直夫人の死後、島津宗家の命により、久定は久直の娘である千代松を娶り、北郷家の家督を相続することになりました。しかし、この家督相続には、いくつかの動きがありました。『都城市史』によると、忠能の妻（佐土原藩初代藩主である島津征久の娘で、法号を「花庭玉蓮大姉」という）や、庶子の北郷久常は、宗家による家督相続への介入に反発する姿勢を示しました。それでも最終的には、宗家の命令を受け入れざるを得ませんでした。

島津宗家は、北郷家に対する支配を強めるために、北郷家を監督する役職として、島津家中の重臣である鎌田政直を配置しました。さらに、屋敷の改築を命じるなど、北郷家への統制を強めていきました。久定自身は、寛文2年（1662年）に19歳という若さで病死しました。彼には後継ぎがおらず、そのため、久定の三弟である忠長が、兄嫁であった千代松と結婚し、家督を相続することになりました。この時、島津宗家の命により、家名を北郷から島津へと改めたため、それ以降は都城島津家と称されるようになりました。

このように、北郷久定は、短くも激動の時代を生きた人物であり、彼の死は、都城における北郷家の歴史に大きな転換をもたらすことになりました。

参考文献
『本藩人物誌 鹿児島県史料集第13集』鹿児島県立図書館、1973年
瀬戸山計佐儀『都城島津家歴代史　全』三州文化社、1992年
* 『都城市史』

もう一度検索