北郷忠能

北郷忠能（ほんごう ただよし）

北郷忠能は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての武将で、北郷氏の12代当主です。文禄4年（1595年）、父である11代当主・北郷忠虎が朝鮮出兵で亡くなったため、わずか5歳で家督を相続しました。幼少のため、政務は祖父の時久が、軍務は叔父の三久が後見を務めました。

翌文禄5年（1596年）には祖父の時久が亡くなり、叔父の三久も朝鮮に駐屯していたため、実務は家老の小杉重頼に委ねられました。慶長4年（1599年）に庄内の乱が勃発すると、伊集院氏が豊臣秀吉の取り計らいで北郷氏の故地である都城を横領したとされ、北郷氏家中は故郷奪還を目指し奮闘しました。乱は島津宗家側の勝利に終わり、北郷氏は都城を回復することに成功しましたが、当時幼かった忠能は軍務に直接関わることはなく、叔父の三久が陣頭指揮を執りました。

慶長10年（1605年）には、家老の北郷久陸を追放するなど、家中への統制を強めます。この頃から忠能自身が北郷家の当主としての実務を行うようになったと考えられますが、朝鮮出兵や庄内の乱で活躍した三久を当主とすべきという意見との対立が起こり、家中は混乱しました。最終的に島津宗家の介入により、三久が別家として独立することで決着しましたが、この頃から、たびたび家中に介入する島津宗家との確執が生まれます。

慶長12年（1607年）には、島津氏の有力分家で佐土原藩主であった島津以久の娘と結婚しました。慶長17年（1612年）には江戸へ赴き、島津宗家を介さずに将軍徳川秀忠に謁見し、馬を拝領しています。

島津家久とは非常に不仲で、家久から「家臣を大事にしない当主は上に立つ資格がない」という内容の詰問状を送られていますが、家久自身が家臣の粛清を度々行っていたため、説得力に欠けていたと言われています。

寛永8年（1631年）、病のため42歳で亡くなりました。忠能の死後、北郷氏では早世する当主が相次ぎ、島津家久の三男である久直が婿として家督を継ぐなど、次第に島津宗家からの圧迫が強まっていきました。

逸話

忠能は弓術に長けており、慶長13年（1608年）10月には、方広寺大仏殿（京の大仏）の前で通し矢を披露し、賞賛されました。このことが、現在の都城が和弓の名産地となる礎を築いたとされています。

また、頓知の名手として知られる徳田大兵衛が、忠能に正月の挨拶に行った際に雑煮を喉に詰まらせて亡くなったという逸話がありますが、年代にずれがあるようです。

参考文献

『本藩人物誌 鹿児島県史料集第13集』鹿児島県立図書館、1973年
県史『宮崎県の歴史』山川出版社、1999年　ISBN 4634324504
伊地知信一郎『日当山侏儒どん』三州談義社、1968年
『都城盆地 史跡ガイドブック ①旧都城市編』南九州文化研究会、2014年

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