北郷久直

北郷久直（ほんごう ひさなお）

北郷久直は、江戸時代前期に活躍した薩摩藩の武士であり、北郷氏の15代当主です。彼は元和3年（1617年）に、島津家久の四男として鹿児島で生まれました。

生涯

久直は幼少の頃から人質として江戸で生活を送ります。寛永元年（1624年）、兄である光久と共に江戸に移り、人質としての生活が始まりました。寛永8年（1631年）には、兄の光久や弟の忠紀と共に将軍徳川家光に謁見し元服しました。さらに、大御所徳川秀忠にも拝謁し、刀などを拝領するとともに、従五位下・式部大輔に任官するという異例の待遇を受けました。当時、支藩の当主でもない、嫡男の弟という立場の人物が幕府から公式な官位と役職を授かるのは非常に珍しいことでした。

当初、久直は垂水島津家の島津久敏の養嗣子となっていましたが、寛永10年（1633年）に北郷忠亮が江戸で急死したことを機に、彼の運命は大きく変わります。島津家久は、以前から北郷家に不満を抱いており、北郷家が鹿児島藩内で大きな領地を持つ分家であることに目をつけ、自分の子を養子として送り込むことで北郷家を掌握しようとしました。当初は、最も寵愛していた三男の忠朗を北郷家の当主に据えようとしましたが、忠朗の実母が強く反対したため、断念しました。その結果、久直が北郷家の養子となることになりました。しかし、この養子縁組は北郷家からの強い反発を招き、久直は忠亮の姉婿となることで、形式的に北郷家の名目を立てて家督を継ぐことになりました。寛永11年（1634年）10月には、都城に移り住んでいます。翌年には、再び人質として江戸に向かうことになりました。

久直は、実兄である2代藩主の光久との関係は良好で、たびたび人質として江戸に滞在し、老中の松平信綱や酒井忠勝らと交流するなど、薩摩藩の重臣としても貢献しました。これにより、島津宗家と北郷家の対立も解消に向かうと思われましたが、寛永18年（1641年）、久直は鹿児島にて25歳の若さで死去しました。

久直には娘の千代松が一人いましたが、後継者がいなかったため、北郷家と島津宗家の対立が再び激化することになりました。久直は、幼少期から人質として江戸で過ごすことが多く、北郷家を相続してからも兄・光久の代理人として鹿児島城にいることが多かったため、都城にはほとんど住んでいなかったとされています。

人物

幼少期より人質として江戸で過ごす。
将軍徳川家光、大御所徳川秀忠に拝謁し、従五位下・式部大輔に任官。
実兄の島津光久とは良好な関係。
松平信綱や酒井忠勝ら老中とも交流。
都城にはほとんど住んでいない。

参考文献

『本藩人物誌 鹿児島県史料集第13集』鹿児島県立図書館、1973年
* 『都城盆地 史跡ガイドブック ①旧都城市編』南九州文化研究会、2014年

もう一度検索