北頓別仮乗降場

かつて北海道宗谷地方の枝幸郡浜頓別町、字日の出の地に存在した鉄道駅、それが北頓別仮乗降場（きたとんべつかりじょうこうじょう）です。日本国有鉄道（国鉄）が運営していた天北線に設けられた仮乗降場という形態の駅でした。通常の駅とは異なり、比較的簡易な設備で特定の目的や地域住民のために設置されることが多かった仮乗降場の一つでしたが、その歴史は決して長いものではありませんでした。

この仮乗降場がいつ開設されたのか、その正確な時期は公的な記録では「時期不詳」とされています。しかし、1957年頃に測量され、1959年に発行された国土地理院の地形図にその存在が記されていることから、遅くとも1950年代中頃までには、当時の日本国有鉄道北見線の仮乗降場として、鉄道管理局の判断によって設置されていたと推測されています。当初は北見線という名称でしたが、昭和36年（1961年）4月1日に路線名が天北線に改称されたことに伴い、北頓別仮乗降場も天北線に所属する施設となりました。

しかし、仮乗降場として地域の人々に利用された期間は、それほど長くありませんでした。沿線地域の利用状況は変化し、この仮乗降場を利用する旅客は次第に減少していきました。時代の流れ、特にモータリゼーションの進展や地域の過疎化といった要因が複合的に影響した結果、利用者の減少は避けられないものとなっていきました。その結果、開業からわずか数年を経て、昭和42年（1967年）10月1日をもって、北頓別仮乗降場はその短い歴史に幕を下ろし、廃止されることとなりました。

北頓別仮乗降場は、浜頓別町の日の出地区に位置していました。地理的には、現在も主要幹線道路として利用されている国道238号線（オホーツクライン）が比較的近くを通っています。また、仮乗降場の南西方向には、国際的にも重要な湿地としてラムサール条約に登録されている美しいクッチャロ湖が広がっており、その周辺には頓別川も流れるなど、自然豊かな環境の中にありました。湖や川といった自然、そして集落を結ぶ道路といった要素が、この仮乗降場の立地を特徴づけていました。

廃止当時、北頓別仮乗降場が営業していた天北線における前後の駅は以下の通りでした。

* 天北線：浜頓別駅 - 北頓別仮乗降場 - 山軽駅

南側には、天北線の主要駅であった浜頓別駅があり、北側には山軽駅が位置していました。

正確な開業年さえ不明確でありながら、短い期間ながらも確かに存在し、地域のささやかな交通手段としての役割を担った北頓別仮乗降場。利用者減少という理由による早期の廃止は、特定地方交通線に指定されるような地方閑散線区における、昭和中期以降の厳しい鉄道経営状況や地域の変化を象徴しています。現在では天北線自体も廃止されており、当時の駅の痕跡を探すことは難しい状況ですが、かつてこの地に鉄道施設が存在したという事実は、地域の歴史の一部として記憶されています。

もう一度検索