十六国春秋

『十六国春秋』は、中国の北魏時代に崔鴻によって編纂された、五胡十六国時代に関する歴史書です。この書物が、五胡十六国時代という名称の由来となりました。『隋書』「経籍志」によれば、全100巻で構成されていました。

伝来の経緯

崔鴻が編纂した元本は、残念ながら北宋時代には散逸してしまい、現代に伝わっていません。司馬光が『資治通鑑』を編纂した北宋初期の時点ですでに、元本の全100巻のうち二十余巻を除いて散逸していたとされています。

現在、四庫全書に収められている100巻本は、明代になって『北史』や『晋書』の「載記」など、他の歴史書から散逸した記述を収集・再編したものです。そのため、北魏の崔鴻が著した元本とは内容が異なっています。

また、『漢魏叢書』にも「十六国春秋」16巻が収録されていますが、こちらも伝来の経緯は不明であり、崔鴻による元本とは別物と考えられています。四庫全書では、この16巻本も「十六国春秋」として扱われています。

さらに、『広雅書局叢書』には、清代の湯球が編纂した「十六国春秋纂録校本」10巻と「十六国春秋輯補」100巻が収められています。これらは、『晋書』やその他の文献に引用されている佚文（散逸した文章）を収集したものであり、それぞれの出典が明記されています。この叢書には、湯球による「三十国春秋輯本」も収録されています。

構成について

現存する主な版本としては、以下のものがあります。

「十六国春秋」
「十六国春秋 (屠喬孫・項琳・四庫全書本）」

注意点

現存する『十六国春秋』は、元本が散逸しているため、明代以降に再編されたものが中心です。そのため、内容を検討する際には、その点を考慮する必要があります。

総括

『十六国春秋』は、五胡十六国時代の研究において重要な資料ですが、その伝来の複雑さから、利用には注意が必要です。現存する版本の成立過程や内容を理解した上で、他の史料と照らし合わせながら研究を進めることが重要となります。

もう一度検索