十和利山熊襲撃事件

十和利山熊襲撃事件（2016年）の概要と背景

2016年（平成28年）5月から6月にかけて、秋田県鹿角市十和田大湯の十和利山山麓で発生した一連の熊による人身被害事件、それが十和利山熊襲撃事件です。この事件では、4名もの尊い命が失われ、記録に残る日本の獣害事件として、過去3番目の被害規模となりました。

事件の経緯

最初の犠牲者

5月20日、鹿角市十和田大湯字熊取平の竹藪で、地元の男性が行方不明となり、翌朝に遺体で発見されました。遺体には、顔や左半身にクマによるものと思われる爪痕や噛み痕が認められました。同日、60代の女性が夫とタケノコ採りをしていたところ、ツキノワグマに襲われる事案も発生。夫の反撃によりクマは逃走しましたが、事態を重く見た警察は、出没地点周辺に注意喚起の看板を設置しました。

2番目の犠牲者

5月22日、最初に男性が遺体で発見された場所から程近い場所で、秋田市の男性が妻とタケノコ採りをしていた際にクマに襲われました。妻は無事でしたが、男性は命を落としました。遺体には側頭部や腹部に爪傷や咬み傷が見られました。また、同時期に氏名不詳の女性がクマに襲われ、軽傷を負うという事案も発生しています。これらの事態を受け、東北森林管理局は現場周辺の林道を封鎖し、クマへの警戒を促す看板を設置しました。

軽傷者

5月26日には、田代平で青森県の男性がクマに襲撃されましたが、持っていた笹竹でクマの顔を突き、撃退に成功しています。また、5月29日には、十和田大湯字田代平の山林で、タケノコ採りをしていた青森県の女性が背後からクマに襲われましたが、同行していた息子がナタでクマを撃退し、女性は軽傷で済みました。

3番目と4番目の犠牲者、そして射殺

5月25日から行方不明になっていた青森県の男性が、5月30日に遺体で発見されました。遺体はクマに食い荒らされたとみられ、損傷が激しい状態でした。6月10日には、6月7日から行方不明になっていた女性の遺体が発見され、直後に地元の猟友会が雌グマを射殺。司法解剖の結果、このクマの胃から人体の一部が発見されました。

その後

6月15日には、4名がクマに襲われ1名が負傷。6月30日には、大清水で男性が頭部に重傷を負うという事案が発生しました。大清水は田代平から9キロメートルほど離れており、当初は一連の事件との関連は不明とされていましたが、後の調査で、このクマは田代平で3番目の犠牲者を食害したクマであることが判明しました。

事件後の対応と調査

事件後も、熊取平や田代平にタケノコ採りのために立ち入る人が後を絶たなかったため、警察は周辺の国道や県道に検問所を設置しました。また、事件に直接関係しなかったクマも駆除されました。

事件の背景

この地域でクマの襲撃が多発した背景には、クマの繁殖期とタケノコの旬が重なること、クマが好む場所に集中する習性、そして、戦後の食糧増産政策によりブナ林が伐採され、チシマザサが繁茂したことなどが挙げられます。さらに、地域住民の高齢化や地域格差により、タケノコ採取を生活の糧とする人が存在することも、背景要因として指摘されています。

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