千田貞季

千田貞季：歩兵戦の神、硫黄島に散る

千田貞季（せんだ さだすえ）は、1892年（明治25年）12月16日に生まれ、1945年（昭和20年）3月8日に硫黄島で戦死した大日本帝国陸軍の軍人です。その卓越した歩兵戦術から「歩兵戦の神」と称され、硫黄島の戦いでは、その勇猛果敢な戦いぶりで米軍に大きな損害を与えました。最終階級は陸軍中将、栄典は従四位勲二等功四級。

生い立ちと軍歴

鹿児島県出身の千田は、旧姓を高山といいました。1906年に東京府立一中に入学しましたが、中退し、1912年に陸軍士官学校に入校。26期生として卒業し、栗林忠道陸軍大将とは同期でした。陸軍大学校には進んでいませんが、その卓越した歩兵戦術の知識と能力から、少将に昇進し、屈指の歩兵専門家として知られていました。

1938年には張鼓峰事件に参戦、1940年には関東軍の連隊長に着任しました。その後、仙台陸軍幼年学校長を務めるなど、着実にキャリアを重ねていきました。

硫黄島の戦い

太平洋戦争末期、硫黄島の戦いにおいて、千田は混成第2旅団長として着任しました。栗林忠道中将の要請に応じたものでした。硫黄島に赴く際、千田は「硫黄島に死にに来た」と語ったとされ、「いさぎよく散ることこそ武士道の道」という信念を持っていました。寄せ集めの部隊ながら、複郭・洞窟陣地を構築し、戦車への突撃を任務とする「突撃中隊」を編成するなど、徹底した戦術で米軍を迎え撃ちました。

千田率いる混成第二旅団は、特に玉名山を中心に激戦を繰り広げ、米軍に多大な損害を与えました。玉名山周辺での戦闘は、米軍から「肉挽き器（ミートグラインダー）」と恐れられるほど凄惨を極め、米海兵隊の進撃を大きく遅らせる要因となりました。

壮絶な最期

米軍上陸から17日後、千田は敵に包囲され、壕に閉じ込められました。栗林中将は再三にわたり玉砕を禁じていましたが、重傷者が増え、限界に達していた部隊を率い、千田は玉砕攻撃の許可を求めます。栗林の強い反対により許可は下りませんでしたが、兵団司令部への合流を命じられました。

427名の兵士を率いて北進を開始しましたが、到着直前に米軍の攻撃を受け壊滅。千田は、1945年3月7日、兵団司令部までわずか300mの温泉浜付近の壕内で、堀静一大佐、中迫撃第三大隊小林孝一郎少佐らとともに自決しました。享年52歳でした。千田が自決した壕は、後に「千田狭間」と呼ばれるようになりました。

千田の死を知った栗林中将は、兵団の総攻撃を決意し、その後の戦闘でも、玉名山に残った兵士たちが米軍に大きな損害を与え続けました。硫黄島の戦い全体で見ても、米軍の死者の半数以上が玉名山とその周辺で発生したとされています。また、米軍が壕を発見した後、火炎放射器によって多くの兵士が焼き殺されたという悲劇も起きました。

年譜

1914年（大正3年）
5月28日 - 陸軍士官学校卒業（第26期）
12月25日 - 陸軍歩兵少尉
1924年（大正13年）3月15日 - 歩兵少佐
1934年（昭和9年）8月1日 - 歩兵第47連隊附・大分県師範学校服務
1939年（昭和14年）8月1日 - 陸軍歩兵大佐・仙台陸軍幼年学校訓育部長
1940年（昭和15年）5月29日 - 歩兵第44連隊長
1943年（昭和18年）2月15日 - 仙台陸軍幼年学校長（～昭和19年11月27日）
1944年（昭和19年）
3月1日 - 陸軍少将
12月16日 - 混成第2旅団長
1945年（昭和20年）3月8日 - 硫黄島で戦死・陸軍中将進級

栄典

勲二等旭日重光章
功四級金鵄勲章

家族・親族

父は陸軍少将の千田貞幹。また、ビアク島で玉砕した海軍中将・千田貞敏は実兄。

脚注

出典

参考書籍

『太平洋戦争の現場がわかる本』（チェリーハウス,2005年1月20日発行） P143など。

関連項目

西竹一 - 玉名山側面（南海岸側）、及び二段岩と玉名山正面（元山飛行場側）に展開していた。
* 第二次世界大戦に関連する人物の一覧

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