南伊予・西土佐の道

『街道をゆく、南伊予・西土佐の道』は、司馬遼太郎が「週刊朝日」に連載した紀行文『街道をゆく』の第14巻です。1978年6月、19日間にわたり、愛媛県の松山市から始まり、砥部町、大洲市、西予市（旧宇和町）、宇和島市（旧吉田町）、松野町を経て、高知県四万十市（旧中村市）に至る旅が描かれています。

この紀行文では、道中で出会う様々な場所や人々、そしてその土地の歴史や文化が紹介されています。例えば、松山は正岡子規、高浜虚子、河東碧梧桐といった俳人を輩出した街であり、愛媛県の県名の由来となった重信川、伊予豆比古命神社、そして砥部焼などが登場します。大洲では、肱川や赤レンガの建物、冨士山（とみすやま）が取り上げられ、旧宇和町（現西予市）の卯之町では、現存する最古の小学校である開明学校や、二宮敬作、楠本イネといった歴史的な人物について触れられています。

旧吉田町（現宇和島市）では、法華津峠、武左衛門一揆、安藤様といった歴史的な出来事や人物が語られます。宇和島市では、城山に武道館を建設する計画に反対する市民運動である新宇和島騒動や、和霊信仰、宇和島城、天赦園、石丸布団店、愛宕山、蔦屋、寄合酒、神田川原（じんでんがわら）など、その土地ならではの文化や風俗が紹介されています。また、宇和島の方言で「短気・変わり者」を意味する「イップリ」という言葉を取り上げ、高知の「いごっそう」、熊本の「もっこす」との比較を通して、地域ごとの気質の違いにも触れています。

さらに、鬼北・西土佐の地域では、松丸街道、清良記、目黒村、四万十川といった自然や歴史に触れ、松野町目黒の建徳寺が所有する重要文化財「目黒山形関係資料」や、「お道を」（別れの挨拶）といった言葉を通して、この地域の独特な文化や歴史的背景が描かれています。

この作品は、単なる旅行記ではなく、司馬遼太郎の深い歴史知識と鋭い洞察力によって、その土地の歴史や文化、人々の暮らしを生き生きと描き出しています。読者は、まるで司馬遼太郎とともに旅をしているかのように、南伊予から西土佐にかけての魅力的な風景や歴史に触れることができるでしょう。

関連書籍として、『花神』、『伊達の黒船』、『鬼謀の人』が挙げられています。

外部リンクには、目黒山形模型及び関係資料と、司馬遼太郎の風景 南伊予･西土佐の道が紹介されています。

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