南北共同連絡事務所

南北共同連絡事務所の概要

南北共同連絡事務所（または北南共同連絡事務所）は、朝鮮半島の南北分断状況下において、大韓民国（韓国）と朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）が共同で運営していた特殊な連絡事務所です。正式な外交関係が存在しない両国間の窓口として、2018年の板門店宣言に基づき、北朝鮮側の開城工業地区に設置されました。この事務所は、事実上、北朝鮮における韓国の在外公館としての機能を果たし、両国間の直接的なコミュニケーションチャンネルとして重要な役割を担っていました。

事務所の運営体制は、韓国側と北朝鮮側それぞれから所長が任命され、初期には韓国側から統一部次官の千海成、北朝鮮側からは祖国平和統一委員会副委員長の田鍾秀が就任しました。しかし、2019年3月以降、北朝鮮側の所長が不在となり、運営体制に変化が見られました。

建設と運営

事務所の建設に関しては、土地は北朝鮮が提供しましたが、建設費用は韓国が全額負担しました。中央日報の報道によると、韓国政府は2018年から2020年5月までの間に、建設費と運営費として総額168億8300万ウォン（約15億円）を支出しました。また、統一部が公開した資料によれば、事務所開設後の2018年9月から2020年5月までの間、南北間で交わされた文書は合計132件に及び、その内訳は交流協力事業関連が最も多く、次いで当局会談と実務会議、遺体引き渡し関連の順でした。

歴史と閉鎖

2018年4月、板門店での南北首脳会談で事務所の設置が合意され、同年9月に開所しました。事務所は、かつて南北交流協力協議事務所として使われていた建物を改修して使用されました。

事務所では週に一度、両代表による定例協議が開催されていましたが、2019年2月の米朝首脳会談（ハノイ会談）以降、この協議は中断しました。同年3月、北朝鮮は事務所から全職員を引き揚げましたが、韓国側職員は事務所での勤務を継続しました。その後、北朝鮮側職員の一部が業務に復帰したものの、所長会議は中断されたままでした。

2020年1月、新型コロナウイルスの世界的流行を受け、南北は事務所の運営を一時的に中止し、韓国側職員は全員撤収しました。この期間中、南北間の連絡はソウルと平壌間の直通電話とファクスを通じて維持されることになりました。

しかし、2020年6月5日、北朝鮮は韓国の脱北者団体による金正恩党委員長を批判するビラ散布を理由に、事務所の閉鎖を発表しました。北朝鮮の発表によると、この決定は金正恩の妹である金与正の指示によるものでした。同年6月16日、事務所は北朝鮮によって爆破されました。

爆破後の状況と賠償請求

事務所の爆破後、金与正は脱北者団体のビラ散布が板門店宣言に違反するとして、韓国政府を非難しました。2023年6月14日、韓国政府は北朝鮮政府に対し、事務所の爆破による損害賠償として447億ウォンの支払いを求めてソウル中央地裁に提訴しました。

この一連の出来事は、南北関係の複雑さと緊張を象徴する出来事として、記憶されることとなりました。

関連項目

南北等距離外交
朝鮮統一問題
* 板門店宣言

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