南北国時代

南北国時代についての考察

南北国時代（なんぼくこくじだい）は、韓国で1970年代から使われ始めた歴史的用語で、主に統一新羅と渤海が同じ時代に存在していたとされる期間を指します。この見方は、主に韓国の歴史観に基づいていますが、北朝鮮ではこの用語は用いられず、代わりに「渤海及び後期新羅」と表現されています。

この用語は、渤海を朝鮮民族の歴史の一部として認識する意図を含んでおり、中国やロシア、さらには日本などの国々では異なった見解が持たれています。特に、中国においては「渤海は古代中国の地方民族政権の一部であり、韓民族の歴史ではない」と主張しており、渤海の建国者が靺鞨族であった点を強調しています。このため、渤海を自国の古代史に取り入れる韓国とは歴史的に対立しています。

統一新羅と渤海の関係

660年代には、朝鮮半島北部に位置していた高句麗が唐と新羅の連合軍により滅ぼされ、その後、新羅が高句麗の南部を占領しました。この結果、朝鮮半島は新羅によって統一され、以後「統一新羅」と呼称される時代が始まります。同時に、唐から冊封された高句麗の遺民たちが、靺鞨族の大祚栄の下で新たに渤海を建国しました。渤海は満洲東部から海道、そして朝鮮半島北部にかけて広がる領域を支配しましたが、新羅との対立は非常に激しく、946年には契丹に滅ぼされました。

韓国の歴史教科書においては、『国史』という教科書が「南北国時代」という呼称を使用していますが、一方で「統一新羅」という用語も併用されており、この点が学界での議論を生んでいます。例えば、酒寄雅志は、崔致遠の文書に基づいて渤海を「北国」と称したことを根拠に、新羅・渤海間の対立を論じています。しかし、彼の意見に対し、渤海と新羅が相対的な位置関係にあることから、単に名目上の「南北国」に過ぎないとの指摘もされています。

南北国時代の学問的背景

「南北国時代」という概念は比較的新しいもので、その議論が本格化したのは北朝鮮の朴時亨による1962年の論文『渤海史研究のために』に端を発します。北朝鮮の立場では、新羅の三国統一が朝鮮準民族の形成に寄与したとされ、これに基づいて新たな歴史観が形成されました。その後、韓国でも李佑成によって「南北国時代」との呼称が提起され、この時代の概念が広まりました。

この問題に関して、韓国では国家の正統性を巡る争いから、渤海を朝鮮史の一部として組み込もうとする動きが強まっています。しかし、渤海を朝鮮の歴史に含めることについては、賛否が分かれています。高麗王朝は新羅の統治体制を継承しており、渤海に関する議論は、主に民族問題に収束しがちです。

南北国時代と歴史的解釈の対立

渤海と新羅は、異なる民族構成と政権であったため、彼らの間に存在していた敵対関係は、同じ民族の内部でのものであったという考え方には問題があります。渤海は靺鞨を主体とし、新羅は韓族を主体とした政権であり、それぞれが独自の文化や制度を持っていたことを理解することが重要です。この観点からは、両者が同じ「南北国」として存在したとは言えません。

他国の歴史観と対立してきたこれらの議論は、特に日本統治時代以降、強い民族主義の影響を受けてます。日本での歴史教育においては、高句麗や渤海が朝鮮史から除外されがちだったことも影響しています。このような状況をもとに、韓国の歴史教育では、自国のアイデンティティを強調するために南北国時代論が支持されるようになりました。

結論

南北国時代という考え方は、歴史教育の中での政治的意味や民族的アイデンティティの問題が絡み合った複雑なテーマであることが分かります。今後もこの議論は続いていくと考えられ、様々な立場からの意見が交わされるでしょう。史学には常に新たな視点が必要であり、これまでの先入観に左右されない客観的な議論が求められます。

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