南岩手郡

南岩手郡（みなみいわてぐん）

南岩手郡は、かつて岩手県の中央部に存在した郡です。明治12年（1879年）に行政区画として正式に発足し、およそ18年間存続した後、明治30年（1897年）に廃止されました。

現在の行政区分では、その領域は主に以下の市町にまたがっています。

盛岡市の一部（上飯岡、下飯岡、飯岡新田、津志田、津志田西、津志田町、三本柳、東見前よりも南側の地域、および門前寺、渋民、玉山馬場よりも北側を除く）
滝沢市の全域
岩手郡雫石町の全域

郡発足までの経緯

南岩手郡が設置される以前、この地域は歴史的な変遷を経てきました。

幕末期、当地域は陸奥国の一部とされ、その全域が盛岡藩の領地でした。明治維新後、戊辰戦争の影響を受け、所属がめまぐるしく変わります。

明治元年12月：陸奥国が分割され、当地域は陸中国所属となります。また、盛岡藩は領地を一時没収され、信濃松代藩の管轄下で「盛岡県（第1次）」と称しました。
明治2年7月：旧盛岡藩が再び当地へ移され、全域が再び盛岡藩領に戻ります。
明治4年7月：廃藩置県により盛岡藩は廃止され、「盛岡県（第2次）」が発足。
明治4年11月：第一次府県統合により、「盛岡県（第3次）」の管轄となります。
明治5年1月：盛岡県（第3次）が岩手県に改称され、以後岩手県に所属します。

この間、明治4年には盛岡城の廃城に伴い、従来の盛岡城下各町が周辺の村に字地として編入されるといった、行政区画の変更が行われました。

明治11年（1878年）に郡区町村編制法が岩手県で施行されると、それまで漠然とした地域区分であった岩手郡が、近代的な行政区画として改めて発足しました。この際、紫波郡から砂子沢村と根田茂村が岩手郡に編入され、後の南岩手郡となる区域は合計49村となりました。

南岩手郡の時代

明治12年（1879年）1月、岩手郡（第1次）は南北に分割され、北岩手郡と南岩手郡が正式に発足しました。南岩手郡の郡役所は仁王村に設置されました。郡域は前述の49村によって構成されていました。

その後、行政 reorganizations が進められます。

明治17年（1884年）頃には、かつて盛岡城下から村に編入された地域について、所属する村名を冠する呼称が使われるようになります。
明治18年（1885年）には、いくつかの村をまとめた戸長役場が設置され、行政運営が行われました。

明治22年（1889年）4月1日には、市制および町村制が施行され、郡域は大きく再編されます。

まず、仁王村などを中心とした区域が合併し、盛岡市が発足して南岩手郡から離脱しました。
郡域に残った地域には、新たに14の村が設置されました。これは従来の49村が統合された結果です。

設置された14村と、現在の行政区画における主な所属は以下の通りです。

藪川村（現在の盛岡市）
玉山村（現在の盛岡市）
米内村（現在の盛岡市）
浅岸村（現在の盛岡市）
簗川村（現在の盛岡市）
中野村（現在の盛岡市）
本宮村（現在の盛岡市）
太田村（現在の盛岡市）
御所村（現在の盛岡市および岩手郡雫石町）
御明神村（現在の岩手郡雫石町）
西山村（現在の岩手郡雫石町）
雫石村（現在の岩手郡雫石町）
滝沢村（現在の滝沢市）
厨川村（現在の盛岡市）

郡の消滅

明治30年（1897年）4月1日、郡制の施行に伴い、南岩手郡と隣接する北岩手郡が合併しました。これにより新たな岩手郡（第2次）が発足し、南岩手郡は行政区画としての役割を終え、廃止されました。

南岩手郡の存在期間は短いものでしたが、近現代の行政区分が確立される上で重要な役割を果たした旧郡の一つと言えます。岩手山は北岩手郡との地理的な境をなすシンボルでもありました。

参考文献

『岩手郡誌』岩手県教育会岩手郡部会、1941年。
『角川日本地名大辞典 3 岩手県』角川書店、1985年。


関連項目

北岩手郡
岩手郡
消滅した郡の一覧
岩手山

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