陸中国

陸中国（りくちゅうのくに）

陸中国は、1869年（明治元年）に陸奥国から分立した日本の地方区分の一つで、東山道に位置しました。現在の岩手県とほぼ同じ領域ですが、一部地域で差異が見られます。本記事では、陸中国の成立から廃止までの歴史、領域、国内施設、人口などについて詳しく解説します。

領域

陸中国は、現在の岩手県から以下の地域を除いた範囲に、秋田県鹿角市と小坂町を加えた地域に相当します。

岩手県：二戸市、二戸郡一戸町、岩手郡葛巻町の一部、八幡平市の一部（北端）、釜石市の一部（唐丹町）、大船渡市、陸前高田市、気仙郡住田町

つまり、現在の岩手県南東部の一部と西北端の一部を除いた地域が、陸中国の領域でした。

沿革

成立前の状況

明治初年時点では、陸奥国の一部として以下の藩が陸中国の領域を支配していました。

盛岡藩
八戸藩
仙台藩
一関藩

戊辰戦争後の処分により、仙台藩が廃藩となり、この地域は大きな転換期を迎えます。

陸中国の成立

1869年（明治元年）12月7日、陸奥国が分割され、胆沢郡、江刺郡、磐井郡、和賀郡、紫波郡、稗貫郡、岩手郡、閉伊郡、九戸郡、鹿角郡が陸中国の所属となりました。

同時に、旧仙台藩領の一部が信濃松本藩の取締地となり花巻県が、盛岡藩領の一部が信濃松代藩の取締地となり盛岡県が設置されました。鹿角郡は弘前藩の取締地となりました。

その後の変遷

陸中国は、成立直後から支配体制がめまぐるしく変化しました。

1869年12月23日：旧仙台藩領の一部が上野沼田藩取締地となる。
1869年12月24日：盛岡藩が転封し磐城白石藩となる。
1869年2月8日：鹿角郡が一揆発生により黒羽藩取締地となり、北奥県を称する。
1869年2月30日：沼田藩取締地が上野前橋藩取締地となり、伊沢県を称する。
1869年7月22日：白石藩が盛岡藩に再転封し、伊沢県と盛岡県の一部を管轄。
1869年8月7日：盛岡県の一部が江刺県に、北奥県が九戸県に再編。
1869年8月12日：胆沢県が設置され、伊沢県などを管轄。
1869年8月18日：花巻県が江刺県に編入。
1869年9月13日：九戸県が八戸県に改称。
1869年9月19日：八戸県が三戸県に改称。

これらの変遷は、戊辰戦争後の混乱期における政府の地方支配の試行錯誤を反映しています。

廃止と再編

1871年（明治4年）の廃藩置県により、藩領は八戸県、一関県となりました。同年11月2日の第1次府県統合により、胆沢郡、江刺郡、磐井郡が一関県、和賀郡、紫波郡、稗貫郡、岩手郡、閉伊郡、九戸郡が盛岡県、鹿角郡が秋田県の管轄となりました。

その後、一関県は水沢県に改称、盛岡県は岩手県に改称しました。最終的に、1876年（明治9年）の第2次府県統合により、旧陸中国の領域は岩手県に編入され、陸中国としての歴史を終えました。

国内の施設

神社

陸中国には、令制国としての一宮は存在しませんでしたが、奥州市の駒形神社が全国一の宮会により「陸中国新一の宮」として認定されています。

地域

郡

陸中国には、以下の郡がありました。

胆沢郡
江刺郡
磐井郡
和賀郡
紫波郡
稗貫郡
岩手郡
閉伊郡
九戸郡
* 鹿角郡

これらの郡は、現在の岩手県を構成する基礎となっています。

人口

1872年（明治5年）の調査によると、陸中国の人口は51万521人でした。

まとめ

陸中国は、短期間で消滅した地方区分ですが、その成立と変遷は日本の地方行政の歴史において重要な意味を持っています。現在の岩手県の基礎を形成した地域であり、その歴史を理解することは、現代の地方行政を理解する上でも重要です。

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