南海丸遭難事故

南海丸遭難事故

1958年1月26日、兵庫県三原郡南淡町（現在の南あわじ市）沼島西方沖で、南海汽船（後の南海フェリー）の旅客船「南海丸」が遭難し、乗客乗員167名全員が死亡または行方不明となる悲惨な海難事故が発生しました。この事故は、海難審判において「機船南海丸遭難事件」として扱われ、その詳細は現在も不明な点が多く残されています。

事故の概要

1958年1月26日17時30分頃、南海丸は小松島港（徳島県小松島市）を出航し、和歌山港（和歌山県和歌山市）へ向かう予定でした。当時、日本海を低気圧が通過する予報が出ており、和歌山地方気象台と徳島地方気象台はそれぞれ16時と17時に強風注意報を発表していました。南海丸もこれらの情報を把握していましたが、18時28分頃、沼島の西方付近で「危険」を知らせる無線連絡を最後に消息を絶ちました。

海難審判の調査によると、事故発生時の紀伊水道周辺海域では、平均風速17～20m、平均波高4～5mと推定されています。しかし、実際に南海丸がどのような状況下で遭難したのかは不明です。そのため、事故原因の特定には至っていません。小松島港営業所長が南海丸へ連絡を試みようとしていた矢先に遭難信号を受信し、和歌山本社や関係機関に救助を要請しました。懸命な捜索の結果、事故発生から2日後の1月28日16時頃、沼島南西端から約2.4海里沖の水深約40m地点で、左舷に傾斜し沈没している船体が発見されました。

この事故により、乗客139名と乗組員28名の計167名全員が犠牲となりました。船内からは86名、船外からは72名の遺体が収容されました。その後、3月9日に船体の引き揚げ作業が開始され、小松島横須沖へ移動後、3月24日には尾道へ曳航されました。

海難審判の裁決では、船体や機関、操舵装置に故障があったわけではないと結論付けられました。また、注意報は日本海の低気圧によるもので、事故当時発生した新たな低気圧による強風については予見できなかったとされています。さらに、船長がどのような状況下でどのような対応をしていたのかも不明であり、事故原因は依然として謎に包まれています。

南海丸の概要

南海丸は1956年4月に竣工した新しい船でした。総トン数494トン、最大搭載人員は472名でした。事故後、引き揚げられた船体は「なると丸」と改名され、1964年にフェリーに置き換えられるまで使用されました。その後、宇和島運輸に売却され「わかくさ丸」として、1973年まで活躍しました。なお、宇高航路に就航していた同名の「南海丸」とは別の船です。

脚注

日本の重大海難（機船南海丸遭難事件） - 海難審判庁

関連項目

南海フェリー
海難事故の一覧#1958年（昭和33年）

外部リンク

日本の重大海難（機船南海丸遭難事件） - 海難審判庁

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