南牟礼豊蔵

南牟礼 豊蔵

（みなみむれ とよぞう）

1960年12月9日、宮崎県都城市に生まれる。珍しい名字である「南牟礼（みなみむれ）」は、鹿児島県東部の大隅半島付近を発祥とする説があり、特に鹿児島県大隅町に多いとされている。全国的には非常に希少な名字で、確認されている人数はわずか40名程度とされる。

地元の宮崎県立都城工業高等学校に進学。高校の同期には後に西武ライオンズでプレーする黒原祐二がいた。高校卒業後、電電九州に入社し、社会人野球の道へ。1980年からは2年連続で都市対抗野球大会への出場を果たし、選手としての実力を磨いた。

プロ野球への扉が開かれたのは1981年。同年のドラフト会議において、阪急ブレーブスから3位指名を受けた。このドラフトでは、電電九州から右田一彦が横浜大洋ホエールズに1位で、村岡耕一も同じく横浜大洋に3位で指名されており、偶然にも同期入社組3名が同時にプロ入りを果たすこととなった。契約に際しては、当時のドラフト1位指名選手であった石嶺和彦の4000万円を上回る5000万円という金額が提示され、入団に至った。担当スカウトは山本公士であった。

阪急ブレーブスに入団後、1982年9月22日に対ロッテオリオンズ戦でプロ初出場。プロ初安打は1982年9月25日の対日本ハムファイターズ戦で記録した。1983年8月11日には対南海ホークス戦で初めて先発出場を果たしている。同年9月3日には対西武ライオンズ戦でプロ初本塁打、これが同時に決勝となる3ランであり初打点ともなった。しかし、この本塁打はバントの構えから打つ、いわゆる「バスター」によるものだったため、当時広島東洋カープから移籍してきたばかりの水谷実雄氏から「バスターは転がすものだ。フライでたまたま入った本塁打を喜ぶな」と叱責され、苦いプロ初本塁打のエピソードとして語り継がれている。

阪急時代のキャリアハイは1989年。この年はチーム名がオリックス・ブレーブスに変更された最初のシーズンでもあった。開幕から先発起用される機会が増え、4月末時点では打率.327と打撃成績の上位に名を連ねていた。しかし、5月に入ると打撃の調子が下降線をたどり、シーズン中盤以降は本西厚博や熊野輝光といった選手たちが起用されることが多くなり、南牟礼は試合終盤の途中出場が中心となった。それでも、この年は自己最多となる106試合に出場し、チームに貢献した。

1990年には背番号をそれまでの「32」から「0」に変更したが、このシーズンの出場試合数はわずか14試合と大幅に減少した。そして1991年、土井正三氏が監督に就任すると、戦力構想から外れることとなった。南牟礼は、かつて阪急で共にプレーした大橋穣氏が守備コーチを務めていた中日ドラゴンズの監督、星野仙一氏に直訴。その熱意が実り、同年5月に川畑泰博との交換トレードで中日ドラゴンズへの移籍が決定した。

中日ドラゴンズでは背番号「40」を着用。しかし、1992年から1993年にかけてほとんど一軍での出場機会を得られなかった。1993年10月13日、球団から戦力外通告を受け、同年10月20日には自由契約選手となった。しかし、現役続行を諦めず、同年11月8日には阪神タイガースへの入団が発表された。阪神での年俸は中日時代から300万円減の1650万円、背番号は「35」となった。

阪神タイガースでは、外野守備に課題があった石嶺和彦（かつて阪急で共にプレーし、契約金でも話題となった）の守備の補佐役として重要な役割を担った。また、打撃面では勝負強さを買われ、真弓明信、長嶋清幸、米崎薫臣とともに「代打四人衆」の一角としてチームを支えた1994年。

プロ野球選手としての社会貢献活動も積極的に行った。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、同僚の弓長起浩と共に被災地に赴き、炊き出しや飲料水、生活必需品（携帯ガスコンロ、オムツ、風邪薬など）を運ぶなど、被災者救援活動に尽力した。

しかし、1995年は一軍出場がないままシーズンを終え、オフに自由契約を通告された。現役続行を目指し、翌1996年2月には福岡ダイエーホークスから入団テスト受験の勧誘を受けた。テスト中に膝を外す重傷を負ってしまい、プロ野球選手としての道を断念、そのまま現役を引退することとなった。

現役引退後は、多方面で活躍の場を見出した。1997年からはラジオ関西の野球解説者として活動。また、プロ野球マスターズリーグでは「大阪ロマンズ」に所属し、2001年度の初年度には内野手が不足していたチーム事情から、現役時代にはほとんど経験のなかった遊撃手として出場し、ベストナインに選ばれるという異色の経歴も持つ。

一方で、医療・健康分野にも関心を持ち、1996年には整体師の資格を取得。さらに、2005年には柔道整復師の専門学校を卒業して国家資格を取得した。資格取得後、兵庫県西宮市に「みなみむれ接骨院」を開業し、地域の人々の健康を支えている。

プロ野球選手としてのキャリアは波乱万丈であったが、その後の人生でも野球解説や治療家として活躍しており、多才な一面を持つ人物である。

主な背番号の変遷:
阪急・オリックス時代: 32 (1982-1989), 0 (1990-1991途中)
中日時代: 40 (1991途中-1993)
阪神時代: 35 (1994-1995)

プロ野球記録:
初出場: 1982年9月22日
初安打: 1982年9月25日
初先発出場: 1983年8月11日
* 初本塁打・初打点: 1983年9月3日

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