占領目的阻害行為処罰令

占領目的阻害行為処罰令（せんりょうもくてきそがいこういしょばつれい）

占領目的阻害行為処罰令は、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）の占領目的に反する行為を処罰するために制定された日本の政令であり、ポツダム命令の一つです。

概要

この政令の前身は、1946年（昭和21年）6月12日に公布され、7月15日に施行された「聯合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令」（昭和21年勅令第311号）です。この勅令では、「占領目的に有害な行為」を以下の３つと定義していました。

1. 連合国最高司令官の日本帝国政府に対する指令の趣旨に反する行為
2. 連合国占領軍の軍、軍団または師団の各司令官が発する命令の趣旨に反する行為
3. 日本帝国政府が発する法令に違反する行為

これらの行為を行った者には、10年以下の懲役若しくは罰金、または拘留若しくは科料が科せられました。

また、占領目的に有害な行為に関する事件は、連合国最高司令官の指令または日本国政府が発する法令に特別の定めがある場合を除き、公訴を取り消すことができず、起訴便宜主義が否定されていました。ただし、事件の裁判管轄が連合国軍事占領裁判所に移された場合はこの限りではありませんでした。

この勅令を全部改正したものが、1950年（昭和25年）11月1日に施行された占領目的阻害行為処罰令（昭和25年政令第325号）です。この政令は、連合国軍の占領政策を円滑に進めるために、その目的に反する行為を厳しく取り締まることを目的としていました。

同令の処罰規定が適用された例としては、二・一ゼネストを計画した伊井弥四郎、伊藤律会見報道事件で虚偽報道をした朝日新聞記者、第一次朝鮮スパイ事件における北朝鮮工作員などが挙げられます。これらの事件は、当時の社会情勢や政治状況を反映しており、占領下における言論や政治活動の自由が制限されていたことを示唆しています。

しかし、1952年（昭和27年）5月7日、「ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く法務府関係諸命令の措置に関する法律」（昭和27年5月7日法律第137号）により、占領目的阻害行為処罰令は廃止されました。これは、サンフランシスコ平和条約の締結により、日本が主権を回復し、GHQの占領が終わったことに伴う措置です。

サンフランシスコ平和条約と同時に締結された旧日米安保条約および日米行政協定により、日本の国内においては完全に日本の主権が及ぶことになり、GHQの指令およびポツダム政令等の超憲法的な管理法体系は廃止されることになりました。そのため、対米関係や治安維持に関する多くのポツダム勅令・政令が法律化されることになり、刑事裁判権等の特例に関する勅令（昭和21年勅令第274号）および占領目的阻害行為処罰令に代わる法律として、1952年（昭和27年）5月7日に刑事特別法として国内法化されています。

占領目的阻害行為処罰令は、日本の戦後史において、占領という特殊な状況下における法制度と社会のあり方を考える上で重要な意味を持つ法令と言えるでしょう。

関連項目

連合国軍最高司令官総司令部
刑事特別法
平和のこえ事件
連合国軍動静公表事件
幌内新聞事件
伊藤律会見報道事件

外部リンク

* 『占領目的阻害行為処罰令』 - コトバンク

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