印東荘

印東荘（いんとうのしょう）

印東荘は、平安時代末期から室町時代にかけて、下総国印旛郡に存在した荘園です。この荘園は、印東常茂を始祖とする印東氏の発祥の地としても知られています。ここでは、印東荘の歴史、範囲、そしてその特徴について詳しく解説します。

印東荘の歴史

平安時代末期

印東荘の初見は、12世紀中頃の史料に見られます。「下総国印東荘郷司村司交名」や「平常澄解」には「印東御庄」と記されており、この頃にはすでに荘園として成立していたと考えられます。当時の領主は平常澄であり、荘内には篠塚、中沢、石橋、小上、新橋などの郷や村が存在し、調氏、藤原氏、苅田氏、中臣氏、平氏などの郷司や村司がいました。

鎌倉時代

鎌倉時代に入ると、印東荘の領家は不明確ながらも、「関東知行国乃貢未済荘々注文」に「成就寺領　印東庄」と記されています。また、印東氏は、常澄の子である常茂が印東次郎と称し、荘園を譲与されたことで、この地の有力な一族となりました。しかし、常茂の子である上総広常が源頼朝に誅殺された後、印東荘は千葉氏の所領になったと考えられています。

印東氏は、千葉氏の支配下に入ると、宝治合戦に関与し、その影響で没落したとされています。しかし、印東荘はその後も香取神宮の遷宮に際して、鳥居造営の役割を担うなど、重要な地域であり続けました。

南北朝時代から戦国時代

南北朝時代には、西園寺公重が後醍醐天皇から安堵された家領の中に「下総国印東庄」の名が見られます。この時期、行方氏が印東荘内の一部を領有していた記録も残っています。また、この頃から、三谷氏、平河氏、六崎氏などの小土豪が荘内に所領を持つようになり、地域の実質的な支配者として台頭してきました。

戦国時代には、粟飯原豊後入道浄泉が周心院に「印東庄伊篠北方村」を寄進し、また、佐倉市の長徳寺や本桜の寺院が印東荘内にあることが確認されています。

江戸時代

江戸時代には、印東荘の領域で検地が行われ、「下総国印東庄大輪御縄水帳」、「下総国印東庄北須賀之郷御縄打水帳」、「下総国印東庄舟形村御縄水帳」などの検地帳が作成されました。

印東荘の範囲

印東荘の領域は、印旛沼東南部から東部一帯、現在の佐倉市、酒々井町、富里市西部、成田市南西部に比定されます。この地域は、中世を通じて、多くの武士や寺社が関与し、多様な歴史が刻まれてきました。

印東荘の特徴

印東荘は、平安時代末期から江戸時代にかけて、地域社会の発展において重要な役割を果たしました。荘園としての成立から、武士の台頭、寺社の関与、検地の実施に至るまで、さまざまな歴史の変遷を見ることができます。また、香取神宮の遷宮に際しての鳥居造営など、地域文化に深く関わる役割も担っていました。

印東荘の歴史は、中世社会における荘園のあり方や、地域社会の変遷を理解する上で、重要な手がかりとなるでしょう。

まとめ

印東荘は、下総国印旛郡に存在した荘園であり、印東氏の発祥の地として、また香取神宮の遷宮にも深く関わった歴史的な場所です。この地は、中世の政治、経済、文化を理解する上で重要な地域であり、その歴史は今日の我々にとっても貴重な教訓を与えてくれます。

もう一度検索