印東常茂

印東常茂：上総氏の悲劇を招いた武将

印東常茂（いんとう つねしげ）は、平安時代末期に活躍した武士であり、上総氏の五代目当主です。平常澄の次男として生まれ、上総広常の兄にあたります。彼は、下総国印東庄に拠点を置いたことから、印東次郎と称し、印東氏の祖となりました。

惣領の座を巡る争い

常茂は、兄である伊西常景が保持していた上総氏と房総平氏の惣領の座を、兄を殺害するという強引な手段で奪い取りました。しかし、この暴力的なやり方は、上総氏や他の房総平氏からの激しい反発を招き、多くの者が常茂の元を離れ、弟の介八郎広常の元へ集結しました。

平家との結びつき

自身の地盤を固めるため、常茂は当時下総の国守であった藤原親盛を通じて、その姻戚関係にあった平家と連携しました。実際に、常茂は大番役として京に上洛しています。しかし、この行動が後の悲劇へと繋がります。

源頼朝挙兵と富士川の戦い

常茂が上洛中の治承4年（1180年）8月4日、源頼朝が伊豆国で挙兵しました。この動きに対し、上総広常とその同族である千葉常胤は賛同し、兵を挙げます。さらに驚くべきことに、常茂の子息たちも父に反旗を翻し、広常に加勢しました。

『源平闘諍録』には、この息子たちの行動が詳細に記録されており、常茂が孤立無援の状態であったことが伺えます。息子たちに見捨てられた常茂は、平維盛を大将とする頼朝追討軍に加わりますが、同年10月23日の富士川の戦いで討ち死にしました。

房総平氏の統一と印東氏のその後

常茂の死によって、房総平氏は広常のもとで統一されることになりました。一方で、父と袂を分かち、源氏に加勢した常茂の子息たちは、御家人として存続を許されました。この結果から、常茂の強引な手法が、一族だけでなく子息たちからも見放され、孤立した状況で命を落としたことがわかります。印東常茂の生涯は、一族の争いと時代の流れに翻弄された悲劇的な武将の姿を伝えています。

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