西園寺公重

西園寺公重（さいおんじ きんしげ）は、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけての公卿・歌人です。内大臣・西園寺実衡の次男として生まれ、権大納言・西園寺公宗の異母弟にあたります。官位は正二位・内大臣（北朝）、太政大臣（南朝）にまで昇り、竹林院・北山と号しました。

経歴

正中2年（1325年）12月、元服と同時に従四位上侍従に叙任され、後醍醐天皇からの厚い信任を得て累進します。嘉暦3年（1328年）9月には従三位に叙され、公卿に列しました。元弘元年/元徳3年（1331年）1月には土佐権守、2月には参議・左中将、10月には権中納言に任じられ、元弘2年/正慶元年（1332年）9月には従二位に昇叙。翌月には皇太子康仁親王の春宮大夫を兼ねましたが、元弘3年/正慶2年（1333年）5月に光厳天皇が廃されたため、参議正三位に落とされ、大夫も辞することとなりました。

建武政権下では、建武元年（1334年）2月に権中納言に復しました。同2年（1335年）6月には兄・公宗が北条氏残党と結んで謀反を企てますが、公重はこれを事前に後醍醐天皇へ密告し、その功績によって西園寺家を継ぐこととなります。しかし、政権崩壊後も北朝から家門を安堵されたものの、室町幕府が介入し、公宗の遺児・実俊の成長後には家門を実俊に移譲させるという条件が付されたため、一族間に対立関係を残すことになりました。延元2年/建武4年（1337年）12月には正二位、延元3年/暦応元年（1338年）11月には権大納言に任じられ、興国7年/貞和2年（1346年）2月には大納言となりました。正平3年/貞和4年（1348年）には右近衛大将、次いで左近衛大将を兼任し、正平4年/貞和5年（1349年）9月には内大臣に任じられます。しかし、この時既に家門は公重の手を離れて実俊が相承していたようで、公重は竹林院第に住して竹林院と称せられました。正平6年/観応2年（1351年）4月に辞職した背景にも、家門をめぐる北朝方公家や武家側からの圧迫があったと推測されます。

正平一統下の正平7年（1352年）2月には再び家門を安堵されて北山第に移り、嫡流として復帰しますが、5月には幕命によってもとの竹林院に帰住させられました。廟堂からの締め出しや所領没収などの憂き目に遭いながらも在京し、正平8年/文和2年（1353年）6月に南軍が京都を回復した際には、久我長通・洞院公賢と議して京都の諸事を処理するように後村上天皇から命じられました。しかし、同年9月に足利尊氏が入京して南朝との和平が破れると、万策尽きた公重は竹林院を売払い京都から没落しました。

その後、正平11年/延文元年（1356年）までに南朝へ参候し、右大臣に任じられました。具体的な官歴については史料を欠きますが、正平19年/貞治3年（1364年）7月には太政大臣として家門を「了長」に譲っているので、間もなく散位へ移って出家したものと推測されます。正平22年/貞治6年（1367年）9月3日に薨去。享年51歳でした。

歌人として

勅撰和歌集には、『風雅和歌集』に「大納言公重」として7首、『新拾遺和歌集』に「入道前内大臣」として1首、『新続古今和歌集』に「竹林院前内大臣」として2首入集しています。また、南朝の准勅撰集『新葉和歌集』には「遍照光院入道前太政大臣」として9首入集しました。歌風は主観的であり、南朝公卿としての真情がこもる詠も見られます。

系譜
父：西園寺実衡（1290-1326）
母：家女房（?-1347）
室：従三位行子？
生母不明の子女
男子：西園寺実長（1334-1355）
女子：西園寺公重女 - 長慶天皇中宮
男子?：西園寺公俊（?-1379?） - 伊予西園寺氏祖

参考文献
小木喬 『新葉和歌集―本文と研究』笠間書院、1984年、ISBN 9784305101815
森茂暁 「北朝と室町幕府」（『増補改訂 南北朝期公武関係史の研究』思文閣出版、2008年、ISBN 9784784214167）
橋本芳和 「建武政権転覆未遂の真相（Ⅲ）―東西同時蜂起計画の信憑性」（『政治経済史学』第503号 日本政治経済史学研究所、2008年9月、NCID AN0012728X）

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