厚み (囲碁)

囲碁における「厚み」とは

囲碁における「厚み」とは、盤面において大きな影響力を持つ、連結が強く、眼の心配がない強力な石の集団のことです。「厚味」と表記されることもあります。これは「薄み」の対義語であり、「薄い」石とは、連結が不十分で眼に不安があり、相手から攻撃される可能性がある状態を指します。

これに対し、「厚み」は相手からの攻撃を受けにくく、周囲の敵石を攻撃する拠点となります。また、相手が近づいてこない場合は、大きな模様や地を形成する基盤となります。

厚みの定義

「厚み」を明確に定義することは難しく、打ち手によって解釈が異なります。横田茂昭は、厚みを「高さ」と「根拠」で測るという考えを提唱しています。ある程度「高さ」がある石は攻められにくく、相手の石を攻める際に武器となります。また、眼型がはっきりしている石は絶対に死なないため、周囲の敵石に対する攻撃拠点となり得ます。

厚みの効果

例えば、黒の星に対して白が三々入りした定石の形を見てみましょう。この変化で白は隅に10目ほどの地を得ますが、代わりに黒は「厚み」を得ます。この黒石は十分な「高さ」があり、周辺に白石が近づいても眼を確保しやすく、攻撃されにくいです。そのため、相手にとって脅威となる強力な「厚み」と言えます。

白が厚みの近くに打ってきた場合、黒は背後から迫り、白が逃げる間に、模様を拡大することができます。この例からもわかるように、厚みは単に石が強いだけでなく、その周辺の展開を有利にする効果があります。

別の例として、小目定石における黒の一団を見てみましょう。この黒石は中央に向けた「高さ」はそれほどありませんが、眼型は完全であり、白に包囲されても全く動揺しません。このような石は、周辺で戦いが起きた際に強力な援軍となり得ます。

厚みを囲うな

囲碁の格言に「厚みに近寄るな」「厚みを囲うなかれ」というものがあります。これは、厚みの近くに打つことの危険性を示しています。例えば、厚みに近い側からツメることは、せっかくの厚みの周囲にわずかな地を作るだけで、効果が薄いです。それよりも、厚みから離れた位置からツメ、相手に窮屈な展開を強いる方が、より大きな利益につながることがあります。

関連・類似用語

形容詞として「厚い」という言葉が使われます。連結がしっかりしていて眼の心配がない強い石を「厚い石」と表現します。また、すぐに相手から厳しい手がないものの、一手かけて完全に心配をなくしておくような手を「厚い手」と表現することもあります。さらに、弱い石を作らず、確実に自分の石を固めて攻めを狙う棋風を「厚い碁」と呼びます。

形勢を表現する際にも使われ、「黒の厚い半目勝負」のように、黒がわずかに優勢な状況を指すことがあります。

厚みと似た概念に模様・勢力がありますが、全く同じではありません。模様は将来的に地になる可能性のある領域を指し、勢力は盤面全体に対する影響力を指します。

模様派の棋士

雄大な厚みを築くスタイルを得意とする棋士には、以下のような人物がいます。

藤沢秀行 - 名誉棋聖。
大竹英雄 - 名誉碁聖。
武宮正樹 - 富士通杯およびテレビアジア選手権の初代優勝者。
片岡聡
王銘琬
依田紀基 - 三星火災杯およびテレビアジア選手権の優勝者。
今村俊也
伊田篤史

まとめ

囲碁における「厚み」は、単に石が強いというだけでなく、盤面全体に影響を及ぼす戦略的な要素です。厚みを理解し活用することは、囲碁で勝利を収めるために不可欠です。この記事が、あなたの囲碁の理解を深める一助となれば幸いです。

参考図書
『厚みの百科　よくわかる模様と勢力』日本棋院
『厚みの活用 これだけは (囲碁ブックス)』 誠文堂新光社　2009年

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