原マルティノ

原マルティノ（Martinão）は、1569年頃に肥前国に生まれ、1629年に亡くなるまで日本のキリシタンとして重要な役割を果たしました。彼は安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活動しており、イエズス会の一員でカトリック司祭でもありました。彼の名前はさまざまに表記され、マルチノやマルチィノとも呼ばれていました。

経歴と天正遣欧少年使節

原マルティノは大村領の名士・原中務の子として育ち、両親もキリスト教徒でした。彼は有馬のセミナリヨという学校で司祭を目指す学問を始めました。日本を巡察していたイエズス会のアレッサンドロ・ヴァリニャーノが、キリシタン大名の大村純忠と出会ったことをきっかけに、青年たちをローマに派遣して司祭の育成を進める計画が立てられました。マルティノはその使節の一員に選ばれ、副使としてローマへ向かいました。

1590年に日本に戻ったマルティノは、翌年に豊臣秀吉と聚楽第で対面しました。秀吉は彼らの存在を高く評価し、仕官するように勧めましたが、マルティノたちはその提案を断り、さらなる学びを続けるため、天草にある修練院へ入庁しました。1593年には他の3人の使節ともにイエズス会に入会し、本格的な司祭への道を歩み始めました。

学びと成果

1601年、マルティノは神学の高等課程を学ぶためマカオのコレジオへ移り、1608年にはついに司祭に叙階されました。彼は特にラテン語の能力に優れており、語学に関して大きな才能を持っていました。宣教活動を行う傍ら、彼は洋書の翻訳や出版にも力を入れました。著名な作品としては、「キリストにならう」として知られる信心書『イミタチオ・クリスティ』の日本語訳「こんてんつすむんぢ」があります。

マルティノはまた、当時の日本におけるキリシタンの有力者との渉外活動にも従事しており、小西行長や加藤清正といった著名な人物とも関わりを持ちました。そのため、彼は日本人司祭の中でも特に知られた存在となりました。

追放とその後

1614年、江戸幕府がキリシタンを否定する方針を打ち出し、追放令が出された際には、11月7日にマカオに向けて出発しました。マカオでも日本語の書籍を印刷・出版し、同じくローマを目指す仲間たちへの支援を行いました仕事に専念しました。

彼は1629年に亡くなり、その遺骸はマカオの大聖堂の地下に葬られました。そこには生涯の師でもあったアレッサンドロ・ヴァリニャーノも眠っており、彼の貢献はその後の日本におけるキリスト教布教活動において、かけがえのないものとなりました。彼の生涯は、日本の宗教史だけでなく、文化交流の面でも意義深いものでした。

もう一度検索