原爆ドーム前停留場

原爆ドーム前停留場：歴史と平和の交差点

広島電鉄本線の路面電車停留場である原爆ドーム前停留場は、広島市中区基町に位置し、駅番号はM10です。ユネスコ世界遺産である原爆ドームの最寄り駅として、国内外から多くの観光客が利用しています。車内放送では日本語に加え英語でも「Atomic Bomb Dome」とアナウンスされ、停車時には慰霊碑の鐘の音をモチーフにした音が流れ、独特の雰囲気を醸し出しています。

歴史を刻む停留場

1912年（大正元年）、広島電鉄本線の開通と同時に、現在の原爆ドーム前停留場までの線路は完成していました。しかし、開業は紙屋町までとなり、原爆ドーム前停留場を含む区間は2週間後の12月8日に開業しました。当初は「櫓下停留場」と呼ばれ、広島城三番櫓があったことに由来しています。線路北側には櫓下変電所も設置され、路面電車への電力供給を担っていました。

1929年（昭和4年）頃には「相生橋停留場」に改称され、停留場の西側に架かる相生橋にちなんでいます。当初は軌道と道路で橋が分かれていましたが、1932年（昭和7年）に併用橋として架け替えられ、特徴的なT字型形状となりました。

太平洋戦争下の1944年（昭和19年）に営業を休止し、翌1945年（昭和20年）8月6日、広島への原子爆弾投下に見舞われます。相生橋のT字型形状が目標となり、爆心地に近い停留場周辺は甚大な被害を受けました。櫓下変電所は倒壊、広島県産業奨励館（現在の原爆ドーム）も破壊されました。広島電鉄市内線は全線で運行を停止しましたが、己斐方面からの復旧が進み、1ヶ月後の9月7日には原爆ドーム前停留場を含む区間が運行を再開しました。

原爆ドームの保存が決まった後、1974年（昭和49年）12月、停留場名は「原爆ドーム前」に改称されました。これは、原爆ドームと広島平和記念公園を訪れる人々への案内を目的としています。その後、2006年にはバリアフリー化工事が完了、2012年には停留場前の軌道が緑化され、更なる利用者の利便性向上を図りました。

停留場の構造と特徴

原爆ドーム前停留場は、道路上にホームが設置された併用軌道です。上下2面の低床式相対式ホームを有し、線路の北側が広島駅方面の上りホーム、南側が広電西広島駅方面の下りホームとなっています。

広島電鉄による停留場整備の一環として、1994年から美装化が進められ、開放的な空間が実現しています。駅名標には日本語に加え、英語、中国語、韓国語の4言語表記が導入されています。

紙屋町寄りには渡り線があり、かつて広島市民球場があった頃は、ナイター試合終了後に当停留場始発の臨時電車が運行されていました。通常は無人駅ですが、ひろしまフラワーフェスティバルや広島平和記念式典開催時には臨時の集札員が配置されます。また、8月6日には原爆投下時刻に合わせて被爆電車が営業運行中に当停留場を通過するダイヤが組まれています。

運行系統と周辺環境

原爆ドーム前停留場には、広島電鉄の2号線、3号線、6号線、7号線、9号線、0号線が乗り入れています。

停留場周辺には、原爆ドーム、広島平和記念公園、広島商工会議所ビル、旧広島市民球場の跡地（現在、観光バス駐車場やイベント広場として使用）などがあります。また、広島市中央公園、広島県立総合体育館（広島グリーンアリーナ）、広島市こども文化科学館・広島市こども図書館、広島市立中央図書館・広島市映像文化ライブラリー、メルパルク広島、おりづるタワーなども徒歩圏内にあります。

隣の停留場は、紙屋町西停留場と本川町停留場です。

未来への継承

原爆ドーム前停留場は、単なる交通の要衝ではなく、歴史と平和を象徴する場所です。多くの人の記憶と想いを乗せ、今日も広島の街を走り続けています。その歴史と役割を理解することで、訪れる人はより深く広島の平和への祈りを共有できるでしょう。

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