原耕

原 耕（はら こう）について

原耕は1876年に鹿児島県の南さつま市坊津町泊に生まれました。彼の家族は代々カツオ漁業を営んでおり、彼自身も医師や政治家としてだけでなく、漁業経営者として知られています。医師としての教育を受けた後の原耕は、明治35年に大阪高等医学校を卒業し、日本領事館付医官としてアメリカとカナダに2年間滞在しました。

帰国後、彼は神戸市衛生課や船医としての勤務を経て、枕崎に医院を開設しながら、政治活動にも乗り出しました。彼は衆議院議員を2期務め、立憲民政党、新党倶楽部、立憲政友会に所属していました。さらに、漁業の発展に寄与すべく、漁師を題材にした映画を製作し、皇室にも献上したことがあります。

漁業に対する貢献

原耕は特に漁業の近代化に多くの貢献をしました。幼少時代には、台風による漁業の困難な状況を目の当たりにし、彼の父が経営していた漁業も被害を受けることがありました。その経験から、医師と船主、鰹漁師として活躍することを決意しました。彼は枕崎造船所を立ち上げ、漁業の機械化や大型化を推進しました。

当時の漁船は風の力に頼った小型の機帆船が主流であり、大規模な海難事故が頻発していました。そこで原は、漁船の動力化や無線設備の整備を推進し、これによって漁業の効率性が飛躍的に向上しました。さらに、衆議院議員として漁船用無線機の補助金法案を成立させ、漁師たちの働きやすい環境を整えました。

大正期には、漁業の不況や他県との競争が激化する中、原は新しい漁船の開発に着手しました。彼が設計した91トン排水量、150馬力の新型漁船「千代丸」と「八阪丸」を自らの手で操縦し、驚異的な漁獲を達成しました。この取り組みは、枕崎がカツオ遠洋漁業の拠点として成長する基盤を築くことになりました。

また、原耕は鮪漁にも注目し、通年で安定した漁獲を実現しました。アメリカに滞在中、彼はシーチキンの缶詰生産に関わり、日本での鮪対米輸出を促進しました。これによって、清水港がシーチキンの生産拠点として発展したのです。現在でも、カツオや鮪漁船は日本の主要な漁業分類として、100トン未満が2級船、100トン以上が1級船に分類されていますが、これも「千代丸」の影響に起因しています。

生涯の終息

残念ながら、原耕は1933年にアンボンで漁業基地を建設中、悪性マラリアに感染し、58歳でこの世を去りました。彼の業績は今でも評価され、枕崎市には彼を称える銅像と記念碑が建立されています。弟の原捨思も漁業家として活動し、衆議院議員を務めました。

原耕の業績は近代漁業の発展に多大な影響を与え、日本の漁業界に今なおその名を残しています。

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