厳忠嗣

厳忠嗣（げん ちゅうし）

厳忠嗣は、モンゴル帝国に仕えた漢人世侯の一人です。東平を中心とする大軍閥を築いた厳実の息子であり、兄弟には厳忠済・厳忠範らがいます。

生涯

幼い頃から張澄・商挺・李楨といった東平厳氏に仕える学者たちに学び、経史や大義について深く理解していました。1251年（辛亥）には、兄で厳実の後を継いでいた厳忠済から東平人匠総管の地位を授けられ、1255年（乙卯）には更に東平路管軍万戸に任じられました。

1257年（丁巳）、厳忠済が南宋領の揚州へ侵攻した際にはこれに従軍し、邵伯埭を攻略する戦功を挙げました。1259年（己未）には、クビライの南征に従い、厳忠済と共に淮河を渡り、別動隊を率いて桂車嶺に進出。南宋軍を打ち破り、蘄州へと進軍しました。クビライ率いる本隊が長江を渡り鄂州を包囲した際には、90日以上にわたる攻城戦に参加し、その功績により金虎符を授与されました。

1262年（中統3年）には、山東の大軍閥である李璮が反乱を起こし、その隙をついて南宋軍が蘄州を攻め始めました。更に、徐州総管の李杲哥が南宋に降伏したことで、山東地方に南宋軍が侵入。これに対し、厳忠嗣はモンゴル将軍の按脱と共に蘄州・徐州で南宋軍を破り、領土を奪還、李杲哥を捕殺する功績を挙げました。また、嶧山・牙山を攻略した功績により、按脱の報告によって銀200両と幣50端を授与されました。

しかし、これらの活躍にも関わらず、漢人世侯の力を警戒したクビライ政権は、「父兄弟子並びに仕えて途を同じくする者は、その弟子を罷めしむ」という布告を出しました。これにより、厳忠嗣も官を辞さざるを得なくなりました。その後、至元10年（1273年）に亡くなりました。

参考文献

愛宕松男『東洋史学論集　4巻』三一書房、1988年
藤野彪／牧野修二編『元朝史論集』汲古書院、2012年

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