厳輿

厳輿の生涯と最期

厳輿（げん よ、? - 196年）は、中国後漢末期に活躍した武将で、揚州呉郡烏程県出生の人物です。彼の兄である厳虎（厳白虎）もまた勇猛な武将として知られており、兄弟揃って戦場において名を馳せましたが、厳輿の運命は険しいものでした。

正史における厳輿の記録

正史『三国志』には厳輿の具体的な事跡は記されていませんが、裴松之が注として引用している『呉録』にわずかな情報が含まれています。建安元年（196年）に、厳虎が孫策の攻撃に備えて城の防備を強化する中、弟の厳輿を和平の使者として派遣しました。この時、孫策は城壁の前に立ちはだかり、厳輿との会談を行うこととなりました。

孫策との会談

会談中、孫策は突然剣を抜いて、厳輿のそばに振る舞いました。その行為に厳輿は驚き、恐怖に駆られました。孫策は彼がどれほど俊敏に反応できるかを試そうとしたようです。「あなたは非常に素早く、座ったままから飛び上がることができると聞いている」と冗談めかして言いました。それに対し、厳輿は「私は剣を見るとそうなります」と返答しましたが、その瞬間、孫策は戟を投げつけ、厳輿は避けることができず命を落としました。彼の死は、厳虎の軍に多大な影響を及ぼし、すぐに孫策に撃破される結果となりました。

演義における厳輿の描写

小説『三国志演義』における厳輿の登場も、正史に近い描写がなされていますが、彼の最期に関しては若干の脚色があります。厳輿は最後に「江東を折半しよう」と申し出ますが、これに対して孫策は「私と対等のつもりか」と激怒し、彼をその場で斬り捨てました。この描写は、厳輿の勇気と不運を強調するものであったと言えるでしょう。

名前の表記と著作

厳輿は、吉川英治や横山光輝による『三国志』では「厳与」と表記される場合があります。各作品での描写は若干異なるものの、彼の卓越した武勇と悲劇的な運命は、共通して人々の記憶に残ることとなりました。

まとめ

厳輿の生涯は、後漢末期の混乱の中での戦争と武士の価値を反映したものです。兄の厳虎と共に艱難辛苦を経て、あっけない死を迎えた彼の物語は、当時の戦乱の激しさを物語っています。彼の最期は、武将としての勇気だけでなく、運命に翻弄された一人の人間としての姿をも浮かび上がらせます。

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