参議院全国区

参議院全国区についての詳細解説

参議院全国区（さんぎいんぜんこく）は、日本の参議院議員選挙において、特定の地域ではなく全国を一つの選挙区として選出する制度です。1947年から1980年までの期間、この選挙制度は日本の参議院議員通常選挙で用いられていました。この全国区制度は、各都道府県を選挙区とする地方区と併せて導入されていました。

この制度の導入は、1946年12月に当時の内務大臣・大村清一によって提案されたもので、全国に知名度や優れた学識を持った人材を選出することを目的としていました。全国の有権者から候補者への投票が行われ、その結果によって定員100名（改選数は50名ずつ）を選出する形を取っていました。

全国区の特異性は、全国全域が一つの選挙区であるため、特定地域に依存することなく候補者が評価される点です。これにより、ゲリマンダーの問題や一票の格差が生じず、すべての候補者が全国の有権者に公平に審査されることとなっていました。

しかし、この制度にもいくつかの課題が存在しました。全国を回る必要があり、選挙活動のための費用が非常にかさむことがありました。このため、選挙にかかる費用が「銭酷区（ぜにこくく）」と揶揄されることもあったほどです。特に、大きな組織を持つ候補者や知名度の高いタレント候補が有利に働く傾向があり、結果的に「金権選挙」となる動きもありました。

また、選挙活動の厳しさから、選挙戦中に体力を消耗し、当選直後に倒れてしまう候補者も実際におり、これが理由で「残酷区（ざんこくく）」という呼称がつけられることもありました。このように、全国から票を得て当選する候補者もいる一方で、単記非移譲式投票のため、取り過ぎた票が無駄になる「死票」の問題も顕在化していました。

候補者の選択肢が非常に多く（定数50人に対して約90人から110人が立候補）、有権者は選ぶ相手を見つけることが難しく感じることもありました。選挙制度にはさまざまな問題が指摘され、その結果、1983年の参議院選挙では、政党名で票を投じる拘束名簿式の比例代表制に移行することになりました。これによって、円滑に候補者の選出が行われるよう改正され、参議院比例区として新たな制度が確立されました。

なお、全国区では無所属候補も応募することができましたが、以降の比例区制度ではこれが禁止されることになりました。2001年以降は、非拘束名簿式による比例代表制が採用され、実質的に全国区制の復活を求める意見も存在しています。

このように、参議院全国区は日本の選挙制度における特異な存在であり、試行錯誤の中でさまざまな評価がなされ続けています。

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