受胎告知 (ドナテッロ)

ドナテッロの『受胎告知』

『受胎告知』、または『カヴァルカンティの受胎告知』は、イタリアの彫刻家ドナテッロが1433年から1435年頃に制作した彫刻作品です。高さ420センチメートル、幅274センチメートル、奥行き30センチメートルのこの作品は、フィレンツェのサンタ・クローチェ聖堂の南側廊の壁面に設置されています。元々は、同聖堂内のカヴァルカンティ家の礼拝堂のために制作されました。

作品の特徴

この彫刻のテーマは、キリスト教の聖典『新約聖書』に記されている「受胎告知」のエピソードです。大天使ガブリエルが聖母マリアにイエス・キリストの受胎を告げる場面が描かれています。聖母マリアは、天使の出現に驚き、背後の書見台や閉じた扉の方へ身をのけぞらせています。一方、ガブリエルは跪き、両腕を胸の前で交差させてマリアを仰ぎ見ています。マリアは開いた時祷書を持っており、その姿は古代ギリシャ彫刻の影響を受けているとされています。

この作品では、聖母マリアとガブリエルの像に高浮き彫りという技法が用いられています。上部には、6体のプット（幼い天使）の像が3組配置されており、作品全体に金メッキが施されています。ピラスター（付柱）の上端には仮面が装飾されており、翼を持つ花冠は、建築家レオン・バッティスタ・アルベルティの紋章である「有翼の眼」を反映していると考えられています。

材料と修復

主材料にはピエトラ・セレーナと呼ばれる砂岩が使用されており、プットにはテラコッタとスタッコが用いられています。1895年には、ジュゼッペ・レッリによって石膏を用いた複製が制作され、ヴィクトリア&アルバート博物館に展示されています。1994年から1995年にかけて行われた修復作業では、作品が元々大理石のような外観にするために白色に塗装されていた可能性や、19世紀の金メッキが元々の状態を反映していることが明らかになりました。

ヴァザーリの記述

画家で建築家のジョルジョ・ヴァザーリは、1568年にこの作品の聖母マリアについて「思いがけない天使の出現に驚きながらも、優雅で控えめな態度で敬意を表している」と記述しています。また、プットについては「高さに恐れをなし、お互いにしっかりと抱き合っているように見える」と述べています。

参考文献

• - 宮下孝晴・下村滋美「ドナテッロ作「ユディトとホロフェルネス」：新たな作品解釈の試み」『金沢大学教育学部紀要 人文科学・社会科学編』第57巻, 2008年2月29日
• - 伊藤拓真「ヴァザーリ時代の史的美術批評とフィレンツェ諸聖堂改修におけるフレスコ画の保存：ボッティチェリ、ギルランダイオ、マザッチョ、ドメニコ・ヴェネツィアーノらの壁画を中心として」『恵泉女学園大学紀要』第28号, 2016年2月
• - 岡北一孝「美術工芸と建築のあわい：ルネサンスのミニチュア建築」『京都美術工芸大学研究紀要』第1号, 2021年3月
• - Sara E. Lombardi, "The Virgin Annunciate, Human and Divine: The Annunciation to Mary in Fifteenth-Century Florentine Art" (Thesis), University of Glasgow, 2000
• - Andrea M Galdy, The Art, History and Architecture of Florentine Churches, 2016-09-27
• - Kim W. Woods, Making Renaissance Art, 2007-03-06
• - Liana De Girolami Cheney, Edward Burne-Jones on Nature: Physical and Metaphysical Realms, 2021-05-27

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