古アッシリア時代

古アッシリア時代：都市国家から領域国家へ

古アッシリア時代は、アッシリアの歴史において、都市アッシュルが独立した都市国家として確立し、領域国家へと発展していく重要な時代区分です。本稿では、古アッシリア時代の政治、経済、社会、文化、宗教など、多岐にわたる側面から詳細に解説します。

時代区分と特徴

古アッシリア時代は、初期アッシリア時代に続く時代であり、プズル・アッシュル1世（前2025年頃）の下でアッシュルが独立都市国家となってから、アッシュル・ウバリト1世（前1363年頃）が即位するまでの期間を指します。アッシュル・ウバリト1世以降は中アッシリア時代と区分されます。

この時代は、アッシリア文化が明確な形をとり始めた最初期であり、アッカド語のアッシリア方言や独自のアッシリア暦が登場しました。アッシュル市は一時的に国際交易の中心地として繁栄しましたが、地政学的には不安定な時代であり、外部勢力による支配や宗主権下への服属も経験しました。

政治体制

古アッシリア時代のアッシュルは、基本的に都市国家であり、政治的・軍事的な影響力は限定的でした。後代のアッシリア王とは異なり、当時の王はアッシュル市の行政機構における第一人者に過ぎず、「（神）アッシュル（の代理たる）副王/総督」を意味するIšši'ak Aššurという称号を用いていました。王は、アッシュルの有力者で構成されるアールム（民会）を主宰し、アッシュル市の行政を担いました。

経済と交易

アッシュルは軍事力・政治力こそ弱かったものの、エリシュム1世（前1974年頃-前1935年頃）の時代から前19世紀末にかけて、広大な交易ネットワークの中心として繁栄しました。アッシリア人は、キュルテペに代表されるような商業植民地を各地に建設し、東はザグロス山脈から西はアナトリアまでを結ぶ交易路を確立しました。

キュルテペで発見された22,000枚以上の粘土板文書からは、古アッシリア時代の文化・言語・社会に関する貴重な情報が得られています。

歴史

プズル・アッシュル1世によって創立された最初のアッシリア王家は、前1808年頃にアムル人のシャムシ・アダド1世によって征服され、終焉を迎えました。シャムシ・アダド1世は「上メソポタミア王国」を建設しましたが、彼の死後、王国は崩壊しました。

その後、アッシュルはアダシ王朝の下で独立を回復しましたが、前1430年頃にはミッタニ王国の属国となりました。前14世紀にミッタニがヒッタイトに劣勢となると、アッシュルは自立し、領域国家へと発展していきました。

社会と文化

古アッシリア時代には奴隷制が存在しましたが、奴隷と見なされる人々の多くは、実際には自由人の家臣であった可能性があります。男性と女性は異なる義務と責任を負っていましたが、財産の相続、遺言の作成、離婚手続きの開始、交易への参加など、同様の法的権利を持っていました。

信仰の中心は、アッシリアの国家神であるアッシュル神でした。アッシュル神は、都市アッシュル自体が神格化されたものと考えられています。

用語

「古アッシリア」は、アッシュルの歴史、政体、経済、宗教、言語、文化を指す時代区分であり、アッシュルの最初期の歴史記録から中アッシリア時代の始まりまでを包含します。専門家の間では、領域的な広がりを含意するアッシリアという呼称を避け、「都市国家アッシュル」と呼ぶことが一般的です。

まとめ

古アッシリア時代は、アッシリアが都市国家として独立し、独自の文化を育みながら、広大な交易ネットワークを築き上げた時代です。外部勢力による支配も経験しましたが、アダシ王朝の下で独立を回復し、領域国家へと発展する基礎を築きました。キュルテペで発見された粘土板文書は、当時の社会、経済、文化を理解するための貴重な情報源となっています。

古アッシリア時代の歴史を紐解くことは、その後のアッシリア帝国の発展を理解する上で不可欠であると言えるでしょう。

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