古口哲

古口 哲

古口 哲（こぐち さとし、1957年11月28日生まれ、2021年11月または10月末死去）は、栃木県今市市（現在の栃木県日光市）出身の日本の元プロボクサー、およびトレーナーです。晩年には自身のボクシングジムである古口・協栄ボクシングジムの会長を務めました。

輝かしいアマチュア時代

伝説のボクサー、大場政夫への強い憧れからボクシングの世界に足を踏み入れました。作新学院高等学校在学中には、1975年と1976年の2年連続で全日本高校フライ級王者の栄冠に輝いています。日本大学へ進学するまでのアマチュアキャリアでは、実に61連勝という驚異的な記録を打ち立てました。この連勝記録は、2013年に李健太によって破られるまで、日本のボクシング界におけるアマチュア連勝記録として長く保持されました。また、国際舞台でも活躍し、1978年に開催された世界ボクシング選手権大会にはバンタム級の日本代表選手として出場しています。

騒動となったプロ転向

1979年、古口氏はモスクワオリンピックでの活躍が期待される中で、突然のプロ転向を表明しました。この発表は、彼を獲得しようとする複数のジムの間で激しい争奪戦を引き起こしました。一時的には国際ジムと契約を結んだものの、高校時代に笹崎ジムと契約していたことが問題視され、大きな波紋を呼びました。この出来事は、古口氏の出身校である作新学院高等学校にちなんで、当時のプロ野球界で起こった江川事件になぞらえられ、「ボクシング版江川事件」と呼ばれています。この騒動の影響で、古口氏は約2年間のブランクを余儀なくされました。最終的には、当時の協栄ジム会長であった金平正紀氏の尽力により、センタースポーツ・ジム（現在のウィン三迫ジム）への移籍が実現しました。この移籍に際して支払われた契約金は、プロボクシング界では極めて異例とされる1000万円という高額でした。

プロボクサーとしてのキャリア

鳴り物入りでプロデビューを果たした古口氏は、元世界王者の西城正三氏から特別指導を受けるなど、大きな期待を背負っていました。しかし、日本スーパーフライ級王座への2度の挑戦はいずれもタイトル獲得に至りませんでした。その後、スーパーバンタム級に階級を上げ、1985年6月24日に再び日本王座への挑戦の機会を得ました。この試合の相手は、後にバンタム級で世界王座を獲得する六車卓也氏でした。試合ではダウンを奪う場面もあったものの、結果は5回TKO負けとなりました。この試合を最後に、古口氏は現役から退くことを決意しました。

トレーナーとしての貢献

現役引退後、古口氏はトレーナーとして新たな道を歩み始めました。協栄ジムにて、当時のエースであった鬼塚勝也氏の担当トレーナーを務め、鬼塚氏の世界王座獲得に多大な貢献をしました。その指導手腕は高く評価され、1992年度には最優秀トレーナー賞を受賞しています。

1994年9月には、現役時代のチーフマネージャーであった宮下政生氏が設立した沖ジムに移籍しました。ここでは竹原慎二氏の世界王座奪取をサポートしましたが、その直後に退職しました。そして1996年1月、東京都板橋区に自身のボクシングジムである古口ジムを設立し、会長となりました。自身のジムでは、東洋太平洋スーパーバンタム級王者となった和氣慎吾選手をはじめ、多くの後進の育成に力を注ぎました。しかし、古口ジムは2020年7月31日をもって閉館。同年9月には東日本ボクシング協会に休会届を提出し、長年身を置いたボクシング界から事実上離れることとなりました。なお、2006年に古口ジムからプロデビューした古口学選手は、古口哲氏の甥にあたります。

晩年と死去

古口氏が死去していたことが明らかになったのは、ボクシング界から離れて間もない2021年11月のことでした。ボクシング専門誌「ボクシング・ビート」の報道によれば、東京都内の自宅アパートで発見されたことは確認されていますが、死亡時期については「11月はじめ」という関係者と「10月末」という関係者がおり、情報が錯綜しています。また、死因についても「ほとんど食事をとっていなかった孤独死」という話や「風呂場で亡くなった」という話など、複数の証言があり、公に明確な死因や正確な死亡日は発表されていません。

ボクシング界で選手として、またトレーナーとして確かな足跡を残した古口哲氏は、静かにその生涯を終えました。

`[関連項目]`
男子ボクサー一覧
ボクシング日本代表選手一覧

`[外部リンク]`
古口哲の戦績 - BoxRec（英語）
ボクシング国体強化合宿を指導 作新高・OB古口哲さん 下野新聞 2009年8月18日

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