古琉球

古琉球とは

古琉球とは、現在の沖縄県を中心とした地域（先島諸島や奄美群島を含む場合もある）の歴史における区分の一つです。具体的には、農耕社会が成立した12世紀頃から琉球王国が成立するまでの期間、あるいは1609年の薩摩藩による琉球侵攻までを指すことがあります。

名称の由来と学術的意義

この「古琉球」という名称は、沖縄学の先駆者である伊波普猷（いはふゆう）が著した学術書『古琉球』に由来します。1911年に出版されたこの書籍は、沖縄の歴史、琉球諸語、民俗、琉球文学などを研究したもので、沖縄学における古典文献として重要な位置を占めています。『おもろさうし』、『中山世鑑』と並び、今日まで読み継がれています。

古琉球の時代区分と特徴

伝説や史書によれば、古琉球の時代には天孫氏王統、舜天王統、英祖王統といった複数の王朝が存在し、それぞれが栄えたとされています。また、三山（さんざん）と呼ばれる各王国が割拠し、各地の按司（あじ）がグスク（城）を築いて覇権を争った時代は、考古学の分野ではグスク時代（または按司時代）と呼ばれています。

琉球において実態を伴った統一王朝が成立し、先島諸島や奄美群島がその版図に含まれるようになったのは、琉球王国の成立後です。グスク時代以前は、貝塚時代と呼ばれる狩猟採集の時代だったと考えられています。

神話・伝承における古琉球

琉球の神話や伝承では、古琉球・グスク時代以前の先史時代は神話時代として、「あまん世（あまんゆ）」や「裸世（はだかゆ）」、「蒲葵ぬ葉世（くばぬはゆ）」などと呼ばれています。「あまん」とはヤドカリのことで、「ヤドカリ時代」とは「ヤドカリぐらいしかいなかった頃」、つまり「ヤドカリぐらいしかいなかった琉球に人が住み始めた頃」という意味合いがあります。また、「蒲葵（くば）」とはビロウのことで、ビロウの葉を腰蓑としていた時代を指します。一方、三山時代後期から琉球王国が消滅するまでの、明や清に朝貢して冊封体制に組み込まれていた時期は「唐世（からゆ）」と呼ばれます。

先島諸島における古琉球

先島諸島においては、出土する土器の分類から、古琉球の時代は新里村期（12～13世紀）と中森期（13～17世紀）に分けられています。

中国の史書における「流求」

注意すべき点として、中国の史書ではある時期まで沖縄と台湾が「流求」（琉球）として一括りに呼称されていたことが挙げられます。沖縄のみを指す琉球の呼称が定着するのは三山時代（明代）であり、それ以前の中国側の流求についての記述は、概ね現在の台湾のことを指すとされています（例：『宋史』「流求国伝」）。

もう一度検索