琉球諸語

琉球諸語（琉球方言）とは

琉球諸語（りゅうきゅうしょご）は、沖縄県と鹿児島県奄美群島で用いられる言語のグループです。これらは日本語と同じく日琉[[語族]]に属しており、琉球語とも呼ばれます。琉球諸語は、日本語の歴史を研究する上で重要な資料であり、その多様性から、言語か方言かという議論も存在します。

琉球諸語の多様性

琉球諸語は、地理的な広がりと歴史的な背景から、地域ごとに大きな違いが見られます。大きく分けて、沖縄本島以北の北琉球諸語と、宮古列島以南の南琉球諸語の2つに分類されます。さらに、北琉球諸語は奄美語と沖縄語に、南琉球諸語は宮古語、八重山語、与那国語などに細分化されます。

琉球諸語は、地域差が非常に大きく、同じ琉球諸語の話者でも、他の方言を理解することが難しい場合があります。これは、各島や集落ごとに独自の発展を遂げてきたためです。また、琉球王国時代には、首里方言が支配層で使われていましたが、大衆の共通語としては普及しませんでした。

琉球諸語の現状

明治時代以降、標準語普及運動や戦後のメディアの影響により、琉球諸語は衰退の一途をたどっています。伝統芸能での使用を除き、日常生活では高齢者とその家族に限定されています。ユネスコは2009年に、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語、八重山語、与那国語を危機に瀕する[[言語]]に指定しました。

現在では、琉球諸語と日本語が混ざり合った新しい方言「ウチナーヤマトグチ」が、若い世代を中心に使われています。これは、琉球諸語の消滅を加速させる要因となっています。

琉球諸語の分類

琉球諸語は、大きく北琉球諸語（奄美・沖縄）と南琉球諸語（先島諸島）に分けられます。

北琉球諸語（奄美沖縄方言群）

奄美語
奄美大島方言
喜界島方言
徳之島方言
沖永良部島方言
与論島方言
沖縄語
沖縄北部方言（国頭方言）
沖縄中南部諸方言

南琉球諸語（先島方言群）

宮古語
宮古島方言
多良間島方言
八重山語
石垣島方言
竹富島方言
西表島方言
与那国語

音韻の特徴

琉球諸語の母音体系は、/a/, /i/, /u/の3つ、または/a/, /i/, /ï/, /u/の4つを基本とします。長母音も多く、地域によって母音の数は異なります。子音体系では、声門破裂音や有気音と無気喉頭化音の区別が見られます。また、宮古語や八重山語では、唇歯摩擦音/f/が他の子音と区別されます。

日本語との対応

琉球諸語と日本語の間には、一定の音韻対応が見られます。例えば、日本語の/o/は、琉球諸語では/u/になる傾向があります。また、語頭のハ行子音がpやɸになるなど、古い日本語の特徴を残しています。

アクセント

琉球諸語のアクセントは、日本語とは異なる特徴を持ちます。語群の分裂や統合が見られ、日琉祖語には3つのアクセント型があったと考えられています。アクセント体系も、二型や三型に限定されるものから、拍数によってアクセント型が増えるものまで様々です。

文法の特徴

琉球諸語の文法は、日本語とは大きく異なります。動詞の活用では、終止形と連体形の区別があり、連用形に「をり」が付いた形が用いられます。また、形容詞の活用も、「さあり」系統と「くあり」系統に分かれます。助詞や代名詞の用法にも、古語の特徴が残っています。

動詞

動詞の活用は、日本語とは異なる体系を持ち、地域によって多様です。終止形、連体形の区別があり、過去形は「てあり」に由来する語尾で表されます。命令形、志向形（意志形）の形も存在します。

形容詞

形容詞は、「語幹＋さ・あり」または「語幹＋く・あり」の形をとります。連用形は「語幹＋く」に由来する形を用い、それ以外は「語幹＋さあり」が活用したものが使われます。

助詞・代名詞

助詞「が」「の」は古語の特徴を残し、主格と属格の区別は発達していません。代名詞には、古代日本語に対応する語形が残っています。

文字

琉球諸語の記録は、古い石碑や歌謡集「おもろさうし」などで見られます。公文書は漢字ひらがな交じり文で書かれました。現代では、日本語の漢字かな交じり表記を応用して表されることが多いです。沖縄県では、2022年に地域ごとの統一的なカタカナ表記法が示されました。

歴史

琉球諸語と日本語は、紀元前後～奈良時代以前に分岐したと考えられています。琉球諸語には、奈良時代以前の日本語の特徴が残っています。15世紀頃から、琉球諸語はひらがなで書き表されるようになり、首里方言が士族語として作られました。

明治時代以降、標準語普及運動が進められ、琉球諸語は衰退しました。現在では、消滅の危機に瀕しているとされ、保存・振興の取り組みが進められています。

言語か方言か

琉球諸語は、日本語と系統を同じくしますが、言語として独立していると見なす立場と、日本語の方言と見なす立場があります。これは、言語と方言を区別する明確な基準がないためです。琉球諸語が言語か方言かの議論は、政治的・民族的な問題とも関連しています。

下位区分か、個別言語か

琉球諸語の各方言は、下位区分の方言と見なされることもあれば、それぞれが独立した言語と見なされることもあります。ユネスコは、奄美語、国頭語、沖縄語、宮古語、八重山語、与那国語を独立した言語として扱っています。

現地での呼称

琉球諸語は、地域によって様々な呼称で呼ばれています。

奄美語：島口（シマユムタ）など
沖縄語：沖縄口（ウチナーグチ）など
宮古語：宮古口（ミャークフツ）など
八重山語：八重山物言（ヤイマムニ）など
与那国語：与那国物言（ドゥナンムヌイ）など

もう一度検索