台中国家歌劇院

台中国家歌劇院：台湾の文化芸術を彩る革新的コンサートホール

2016年9月30日に正式オープンした台中国家歌劇院は、台湾台中市西屯区に位置する、世界的に注目を集める大型公共コンサートホールです。日本の建築家、伊東豊雄氏によって設計されたその建物は、単なるコンサートホールの枠を超えた、芸術と技術の融合を体現する建築物と言えるでしょう。

建築デザインと構造

伊東豊雄氏の設計コンセプトは「サウンドケーブ（音の洞窟）」。5万7千平方メートルを超える敷地に、地上6階、地下2階、高さ37.7メートルの鉄筋コンクリート構造（一部鋼構造）の建物が建ちます。最大の特徴は、三次元曲線の壁面。この独特の曲線は、「カテノイド（懸垂面）」と呼ばれる数学的概念に基づいており、「ニュートラスウォール工法」と呼ばれる高度な技術を用いて実現されました。58枚もの大きさの異なる曲面パネルを組み合わせるこの工法は、高い技術力と精巧な施工を必要とし、幾度も入札が流れたほどです。

建物内部は、「エマージング・グリッド（生成するグリッド）」の概念に基づき設計されています。梁と柱が直角に組まれない独特の構造のため、従来の消防設備の設置は不可能でした。そこで採用されたのが、水幕式火災防災システム（ウォータースクリーン）です。この曲線壁面と水幕消防システムは、特許を取得しています。

音響設計は日本の永田音響設計が担当し、最高の音響環境を実現しています。

施設概要

歌劇院は、大劇場、中劇場、小劇場、そして屋外円形劇場である野外劇場から構成されます。各劇場は、可動式ステージや可変式の観客席などを備え、多様な演目に対応可能です。

大劇場（大劇院）: 1,861席（車椅子席13席を含む）を備え、2階席前には昇降式の観客席「楽池区」を設置。
中劇場（中劇院）: 794席（車椅子席8席、楽池区94席を含む）で、演目によってレイアウト変更が可能。
小劇場（小劇院）: 最大200席の可変式舞台を持つ小規模劇場。
野外劇場: 1,000平方メートルの屋外円形劇場。小劇場と一体利用も可能。
* 空中花園（スカイガーデン）: 6階に位置する屋上庭園。ミニコンサートや上映会にも利用可能。

さらに、レストランや多機能型スペース、地下駐車場なども完備されています。

建設と受賞

建設は、2009年12月に着工し、2014年11月23日に竣工。しかし、施工不良が発見されたため、2015年1月1日から閉館し、改修工事が行われました。2016年9月30日に正式オープンを迎えています。

その独創的な建築デザインと施工技術は高く評価され、行政院公共工程委員会の公共建築「金質奨」を受賞するなど、数々の賞を受賞しています。2018年には日本デザイン振興会主催のグッドデザイン賞ベスト100にも選出されました。伊東豊雄氏自身も、この歌劇院の設計により、2017年の第30回村野藤吾賞を受賞しています。

アクセス

台中捷運（MRT）緑線市政府駅より徒歩10分、また、多数のバス路線も利用可能です。

まとめ

台中国家歌劇院は、建築、技術、そして芸術の融合によって生まれた、台湾を代表する文化施設です。その革新的なデザインと高い機能性は、国内外から多くの注目を集め、台湾の文化芸術の発展に大きく貢献しています。訪れる際には、その圧倒的な建築美と、洗練された空間で繰り広げられる芸術に触れてみてください。

もう一度検索