台北大空襲

台北大空襲の概要

台北大空襲は、第二次世界大戦中の1945年5月31日に発生しました。この日は、連合国軍の爆撃機によって、台湾台北州の台北市が無差別に攻撃されました。空襲の結果、日本人を中心とする約3,000人の市民が命を落とし、負傷者や家を失った人々は数万人にのぼりました。

事前の背景

台湾が空襲を受けるのは台北大空襲が初めてではありません。1938年にはソ連義勇軍と中華民国空軍による松山飛行場への攻撃が行われ、その後も1943年にはアメリカ陸軍航空軍による新竹空襲がありました。こうした空襲は小規模で、主に軍事拠点を狙ったものでしたが、アメリカ軍による本格的な台湾空襲は1944年から始まります。

ここで紹介する台湾沖航空戦やフィリピン戦関連の攻撃により、台湾の日本軍戦闘機は次第に壊滅し、空襲の脅威が増していきました。

空襲の進行

1945年5月31日の空襲では、フィリピンのスービック湾にいたアメリカ第5空軍が117機のB-24爆撃機を投入しました。午前10時から午後1時にかけて、台北を目標にした波状攻撃が行われ、対空砲が存在していた台北市内の軍事施設や官庁街が主要な照準を受けました。合計で3,800発もの強力な爆弾が投下され、さまざまな施設に甚大な被害をもたらしました。

被害の実態

特に大きな被害を受けたのは台湾総督府庁舎で、迷彩偽装も虚しく爆撃にさらされました。建物の構造の一部が崩壊し、火災も発生しました。この火災は数日間燃え続け、結果として建物の大部分が使えなくなってしまいました。また、総督府内に避難していた人々は、崩れた階段に閉じ込められる事態が発生しました。

他にも、行政機関や商業施設が大きな打撃を受け、聖母無原罪司教座堂や大稲埕の淡水戯館も全壊しました。多くの市民が生活の基盤を失い、台北市内における住宅や文化財の被害も深刻でした。市民の死者は3,000人以上で、これは過去のアメリカ空襲による台湾全体の死者数に匹敵します。

空襲以降の状況

空襲によって日本の防空体制は機能不全に陥り、その後は台湾総督府が実施した学校の集団疎開や防空訓練が行われることになります。戦後、中華民国政府はこの空襲の記録をメディアや教科書から排除し、国民の目から遠ざける動きを見せました。

2009年には、空襲に関連する不発弾が台北メトロの建設現場で発見されるなど、今もなおその記憶は人々の中に残っています。台北大空襲は、戦争がもたらす悲惨さと市民に対する影響を改めて考えさせられる事件として、台湾の歴史に刻まれています。

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