台湾省政府功能業務・組織調整

台湾省の虚省化：地方自治から行政院機関へ

台湾省政府の機能・組織調整、通称「虚省化」は、1998年に中華民国政府が台湾省の地位を地方自治体から行政院の機関へと転換した政策です。これは、中華民国憲法増修条文第9条第3項に基づいて行われました。本稿では、この政策の背景、過程、結果、そしてその後の状況について詳細に解説します。また、同時に虚省化が実施された福建省の状況についても触れます。

背景

1949年末、国共内戦に敗れた中華民国政府は中国大陸の統治権を失い、首都を台北に移しました。1955年の大陳島撤退後、中華民国政府が実効支配する領域は、台湾省全域と福建省の一部である金馬地区、南シナ海の東沙諸島と太平島に限られました。台湾省は実効支配地域の大部分を占め、1996年には台湾公民による総統・副総統の直接選挙が実施されました。これにより、民選の総統と民選の台湾省政府主席（後に「台湾省長」に改称）の支持基盤が極めて近接しました。中央政府と地方政府の権限重複という問題を解決するため、1997年に憲法改正が行われ、省の虚級化が決定されました。

虚省化の過程

1997年7月21日、改正憲法が公布され、省を行政院の出先機関として再編し、地方自治機能を削除することが決定されました。1999年1月13日には、県・市政府の機能強化を盛り込んだ「地方制度法」改正案が立法院で可決されました。これにより、省の自治権が剥奪され、「省県自治法」と「直轄市自治法」は廃止されました。1998年10月9日には、「台湾省政府功能業務・組織調整暫行条例」が成立し、省政府の機能・組織の調整が実施されました。この条例は2000年12月21日に施行され、後にその期限が2005年12月31日まで延長されました。最終的に2006年10月20日、この条例は廃止されました。

結果

1997年の憲法改正により、省の機能が大幅に削減された影響は、台湾省だけでなく福建省にも及びました。福建省政府は台湾省政府ほど組織化されておらず、付属機関もありませんでした。1998年12月20日、民選の台湾省政府主席であった宋楚瑜氏が退任したことで、民選の省政府主席という役職は廃止され、中央政府が省政府主席を任命するようになりました。1998年12月21日以降、台湾省政府は行政院の一機関となり、組織は大幅に縮小され、機能も削減されました。台湾省議会は「台湾省諮議会」に改組され、地方自治の監督権限を失いました。

1999年以降、省が管轄していた機関は国の機関へと転換が進められました。例えば、省立高級中学は国立高級中学に、省立病院は行政院衛生署傘下の病院に変わりました。省属の公営事業機関の資本も、中央政府に移管されたり、民営化されたりしました。

その後

虚省化後、行政院は省政府が管轄していた場所に様々な部局を設置しました。1998年から2017年にかけて、行政院連合服務中心が各地に設立されました。2010年代には、台湾省政府の予算が1億台湾ドル以上計上されており、台湾独立を支持する政党からは凍結や廃省が求められました。2017年には、台湾省政府と福建省政府の予算が合わせて2億8000万台湾ドルに達し、「盲腸機関」との批判も出ました。

2018年6月28日、当時の行政院長である頼清徳氏は、2019年以降の省政府予算のゼロ化と任務の廃止を発表しました。2018年7月1日には、台湾省政府の行政組織と業務は国家発展委員会に移管されました。2019年1月1日には、福建省政府の行政組織と業務が行政院金馬連合服務中心に移管されました。台湾省諮議会の行政組織と業務は立法院中南部服務中心に移管され、議会関連の業務は国史館台湾文献館に移管されました。

現在、台湾省政府、台湾省政府主席、台湾省諮議会、福建省政府、福建省政府主席はいずれも実質的に廃止されています。中華民国憲法増修条文には、これらの職名のみが残存しています。


この一連の政策は、台湾の政治・行政構造に大きな変化をもたらし、中央政府と地方政府の関係を再定義するものでした。

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