台湾総督府鉄道14形蒸気機関車

台湾総督府鉄道14形蒸気機関車：知られざる歴史と特徴

14形は、かつて日本統治下の台湾総督府鉄道で活躍したタンク式蒸気機関車です。そのルーツは、台湾鉄道がアメリカのボールドウィン・ロコモティブ・ワークスに発注したものの、未完成に終わった車両にあります。1898年（明治31年）9月に4両が製造され、当初は1 - 4の番号が与えられました。

複雑な生い立ちと改番

これらの機関車は、台湾総督府に買収され、鉄道部の所属となりました。当初はそのままの番号で使用されましたが、重複番号の解消のため、1899年（明治32年）10月に改番が実施されました。2両ずつが南北に分けられ、南部配置車は3, 5、北部配置車は24, 26とされました。その後、南北鉄道統合に先立ち、1905年（明治38年）に再度改番が行われ、14 - 17という番号に落ち着きました。

特徴的な構造

14形は、車軸配置2-4-2(1B1)の単式2気筒飽和式タンク機関車であり、運転室とは独立した炭庫が特徴的でした。この形態は、山陽鉄道の10形（後の鉄道院950形）と類似しており、車軸配置2-6-2(1C1)の北海道官設鉄道D1形（後の鉄道院3010形）から動軸を1軸減らして短くしたようなスタイルでした。運転室から独立した炭庫や側水槽の形態も共通していました。

独立した炭庫と開放的な運転台後部は、亜熱帯気候の台湾に適しているように見えましたが、開放度が高すぎたため、後進運転時の雨対策として、1905年に運転台後方にウェザーボードが設けられました。

配置と晩年

当初、北部の2両は台北庫、南部の2両は打狗庫と台南庫に配置されました。その後、嘉義庫や高雄庫に分散していた時期もありましたが、1920年（大正9年）頃には全て台北庫に集められました。1931年（昭和6年）には14, 15が廃車となり、残る16, 17は引き続き台北庫に所属していましたが、1936年（昭和11年）に運用から外れ、台北と高雄で洗缶用として使用されることとなりました。1937年（昭和12年）には形式称号が改正され、B31形となりましたが、番号の変更はありませんでした。

16は戦時中に爆撃を受け大破、再起不能となり1947年6月12日付で廃車。17は戦後、台湾鉄路管理局に引き継がれ、1949年2月1日付でBK1型（BK1）に改番されましたが、1951年度に廃車となりました。しかし、解体はされず、1956年頃まで台北駅構内にその姿を残していました。

主要諸元

全長：9,757mm
全高：3,734mm
全幅：2,502mm
軌間：1,067mm
車軸配置：2-4-2(1B1)
動輪直径：1,245mm
弁装置：スチーブンソン式
シリンダー（直径×行程）：356mm×508mm
ボイラー圧力：11.0kg/cm2
火格子面積：1.67m2
全伝熱面積：69.21m2
煙管蒸発伝熱面積：62.52m2
火室蒸発伝熱面積：6.69m2
小煙管（直径×長サ×数）：45mm×3,581mm×125本
機関車運転整備重量：36.63t
機関車空車重量：28.45t
機関車動輪上重量（運転整備時）：23.65t
機関車最大動輪軸重（第1動輪上）：12.08t
水タンク容量：5.46m3
燃料積載量：0.9t



参考文献
寺島京一「台湾鉄道の蒸気機関車について」1988年 レイルNo.23 エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン刊 ISBN 4-87112-173-9
「全國機關車要覧」1929年 車輛工学社（1993年 アテネ書房復刻）
近藤一郎「台湾の蒸気機関車についての覚書(1)」　鉄道史料2013年7月号（No.137）、鉄道史資料保存会刊
近藤一郎「ボールドウィンの中・小形機関車完結編」2018年、機関車史研究会刊

もう一度検索