台湾鉄道ホテル

台湾鉄道ホテルは、1908年に台湾総督府鉄道部によって開業した、台湾初の本格的な西洋式ホテルでした。その所在地は、現在の台北駅南側に位置し、かつては台北市表町2丁目7番地という住所でした。鉄道ホテルは、その開業当初から、台湾を訪れる皇族や財界人のための迎賓館としての役割を担っていました。

ホテルの設計は松崎萬長が手掛け、赤レンガ造りのドイツ風建築は、当時としては非常にモダンで目を引くものでした。内部には、高天井のロビーや豪華なシャンデリアが設置され、優雅な空間を演出していました。また、レストランで使用するナイフやフォーク、客室の磁器製トイレなど、細部に至るまでイギリスからの輸入品が使用され、その質の高さが伺えます。

客室は全30室あり、宿泊費は部屋のランクによって異なりましたが、いずれも高額な設定でした。最も安い部屋でも1泊3円、最も高い部屋は27円と、当時の一般的な宿泊施設と比較すると、かなり高価であったことがわかります。このことからも、鉄道ホテルが特別な顧客層をターゲットにしていたことがうかがえます。

1936年には、台南駅2階に台南鉄道飯店が開業したことに伴い、名称を台北鉄道ホテルに変更しました。また、ホテル業以外にも、台北駅や高雄駅で食堂を営業するなど、事業の幅を広げました。しかし、1945年5月31日の台北大空襲で、ホテルはアメリカ軍の爆撃を受け、大きな被害を受けました。終戦後、修復工事が行われましたが、かつての姿を取り戻すことはできず、その後廃業し、現在ではその建物を見ることはできません。

ホテルの敷地面積は3,069坪と広大でしたが、実際の建物面積は620坪、3階建てでした。1階には、ロビー、喫煙室、読書室などが設けられ、屋外には余興舞台もありました。宿泊費については、1930年代の資料によると、朝食が1円50銭、昼食が2円50銭、夕食が3円、茶菓子が40銭でした。当時としては高額な設定であったことが伺えます。台湾鉄道ホテルは、その豪華な設備やサービスから、数多くの著名人も宿泊しています。板垣退助は1914年に、久邇宮邦彦王は1920年に、郁達夫は1936年にそれぞれこのホテルを利用しました。

現在の所在地は、台北駅の南側に位置する新光摩天大楼と亜洲広場大楼のある場所で、忠孝西路、館前路、許昌街、南陽街に囲まれたエリアです。正面玄関は館前路側にありました。台湾鉄道ホテルは、その短い歴史の中で、台湾における西洋文化の象徴として、また、多くの人々の記憶に残るホテルとして、その名を刻みました。

もう一度検索