蔣済

蔣済（しょう さい）

蔣済（しょう さい、生年不詳 - 嘉平元年（249年））は、中国三国時代の魏に仕えた武将、政治家です。字は子通（しつう）。

生涯

蔣済は若い頃から才能を発揮し、郡の計吏や州の別駕（州刺史の補佐官）を務めました。

合肥の救援

建安13年（208年）、揚州の合肥が孫権軍に包囲されるという危機に際し、曹操は援軍を送りました。しかし、援軍の多くが疫病に倒れるという状況でした。そこで蔣済は、大軍が合肥に向かっているという偽情報を孫権軍に流し、見事に孫権軍を撤退させることに成功。合肥に籠る曹操軍の危機を救いました。

曹操への進言

建安14年（209年）、蔣済は曹操に淮南の住民の移住について意見を求められました。彼は、人々は故郷を懐かしむため、移住を喜ばないだろうと反対しました。しかし、曹操は蔣済の意見を聞き入れず移住を強行。結果的に、淮水・長江付近に住む十数万の人々が孫権の領地へ逃亡するという事態を招きました。曹操は後に蔣済に対し、「賊を避けさせようとしたのに、かえって敵の方へ追いやってしまった」と笑って語ったとされています。

その後、蔣済は曹操の信頼を得て丹陽太守に任命され、南征からの帰還時には温恢（おんかい）の別駕となりました。一時、謀反の疑いをかけられますが、曹操はこれを一笑に付しました。後に中央に召喚され、丞相主簿の西曹の属官となります。

関羽の樊城包囲

建安24年（219年）、関羽が樊城と襄陽を包囲し、援軍の于禁（うきん）が水没して降伏すると、曹操は関羽が許都に近いことを恐れ、遷都を検討しました。蔣済は司馬懿と共にこれに反対し、孫権に関羽の背後を衝かせる策を献じました。曹操がこの策を実行すると、孫権は荊州に攻め込み、関羽を捕らえ斬ることに成功しました。

曹丕（文帝）の時代

曹丕（文帝）の時代には相国長史となり、魏が建国されると東中郎将となりました。中央に留まることを願い出ますが、曹丕に叱咤激励され、『万機論』を献上しました。後に中央に戻って散騎常侍となり、夏侯尚（かこうしょう）宛ての詔勅の内容を見咎め、曹丕に諫言して撤回させています。

黄初3年（222年）、曹仁（そうじん）が呉征伐をした際には別軍を率いましたが、曹仁の用兵を批判しました。曹仁は忠告を受け入れなかったため大敗を喫しました。曹仁の死後、東中郎将に復帰し、曹仁の兵を指揮しました。

225年、曹丕が広陵へ親征した際、蔣済は水路の交通が困難であることを上奏し、また『三州論』を献じて諌めましたが、聞き入れられませんでした。曹丕は忠告を受け入れず、軍船数千隻と10余万の大軍は渋滞して進むことができませんでした。撤退の途上、魏軍は呉の孫韶（そんしょう）に襲われ敗北しました。

曹叡（明帝）の時代

曹叡（明帝）が即位すると関内侯に封じられました。太和3年（229年）、曹休（そうきゅう）が呉征伐をした際には中護軍にもなりましたが、蔣済の予測通り、曹休は大敗を喫しました。中書監の劉放（りゅうほう）と中書令の孫資（そんし）に専横の傾向が見られたため、曹叡に諫言しました。また、遼東への度重なる軍事行動を批判しましたが、聞き入れられませんでした。

曹叡が宮殿造営に熱中し、女色に耽るようになると、これを厳しく諫言し、曹叡から評価されました。司馬懿の公孫淵（こうそんえん）征伐の際には、曹叡から孫権の動向について質問され、孫権が救援すると見せかけて魏を惑わすつもりであり、魏が勝利できなければ公孫淵を呉に仕えさせようとするだろうと答えました。

曹芳（斉王）の時代

曹芳（斉王）の時代には領軍将軍・昌領亭侯となり、太尉にまで昇進しました。祭祀をめぐり高堂隆（こうどうりゅう）と議論する一方、専権を握る曹爽（そうそう）一派を憎んでいました。嘉平元年（249年）、司馬懿が曹爽に対してクーデターを起こした際には、司馬懿に協力し、助命を条件として曹爽を降伏させることに成功しました。しかし、司馬懿が曹爽一派を殺そうとしたため諫めますが、容れられませんでした。曹爽らを誅滅した功績により恩賞を与えられましたが、固辞しました。

『世語』によれば、蔣済は曹爽に対し「殺されることはない」と投降を促していたため、曹爽が司馬懿に殺されると、曹爽を裏切ってしまったことを気に病み、同年の内に死去したと伝えられています。諡号は景侯。

人物

蔣済は「硬骨漢」と呼ばれ、晩年の明帝に「蔣済がいなければ、こういう話は聞けない」と言わせたほどの性格でした。人物眼にも優れており、鍾会（しょうかい）の優れた才能をいち早く見抜いています。著述もよく書き、『万機論』・『三州論』などの作品を多数著しました。

一方で大の酒好きで、酒に酔っては乱暴したり、面会を求めた者を体よく追い返すなどの一面があったため、人から恨まれ、人望に乏しかったとされています。寿春県令であった時苗（じぼう）を泥酔して門前払いした際には、時苗から恨みを買ったというエピソードも残っています。

同世代の司馬懿とは親友の仲にあり、正史にも彼と司馬懿の会話が記載されているものが少なくありません。曹爽の下に桓範（かんぼん）が逃亡した際には「曹爽には桓範を用いることができないだろう」と言い、その通りになりました。また、王淩（おうりょう）の子である王広（おうこう）の才能を司馬懿の前で賞賛し、後に王淩の一門を滅ぼすことになるのではないかと後悔した話も残っています。

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