吉の谷彰俊

吉の谷彰俊（よしのたに あきとし）

吉の谷彰俊は、1949年4月23日に長崎県南松浦郡三井楽町（現在の五島市）で生まれ、2000年1月14日に50歳で亡くなった元大相撲力士です。本名は吉谷作利（よしたに さくとし）で、出羽海部屋に所属していました。

生い立ちと入門

五島列島の福江島で育ち、同郷の横綱・佐田の山に憧れて、中学校卒業後に出羽海部屋に入門しました。1965年5月場所に16歳で初土俵を踏み、当初の四股名は本名の「吉谷」でした。

力士としての歩み

三段目で3年半ほど苦労し、「宇戸の山」と改名した時期もありましたが、その後「吉の谷」に改名しました。1970年5月場所で三段目優勝を果たし、翌場所には幕下に昇進。1972年5月場所には十両に昇進、そして1974年1月場所で念願の入幕を果たしました。

弟弟子であり、同じく小兵力士であった鷲羽山とは、ほぼ同時期に十両・幕内へ昇進し、出世を競い合いました。また、1年後輩の床山・床安にとって、吉の谷は「忘れられない先輩」であり、その人柄を慕われていました。ある時、床安が食事に困っていた際、吉の谷が密かに卵とふりかけを差し出したという心温まるエピソードが残っています。この時、吉の谷は「関取になったら、お前に髷を結ってもらう」と約束し、見事その夢を実現させました。

吉の谷は、小柄ながらも全身から闘志をみなぎらせる相撲が特徴でした。右四つで食い下がり、投げや捻りを駆使して粘る取り口で、特に足取りは彼の代名詞とも言えるほどの得意技でした。その足取りは、相撲の「波まくら」ではなく、レスリングの「シングルレッグダイブ」の要領で繰り出されるもので、1970年代の角界で「足取りといえば吉の谷」と言われるほどでした。

入幕5場所目には自己最高位となる西前頭4枚目に進出しましたが、右肘の故障により幕内から陥落。その後は十両と幕下を行き来する苦しい土俵生活を送りました。1978年5月場所では、幕下付出から14連勝で十両昇進を狙う長岡（後の大関・朝潮）を、得意の足取りで破り、その名を轟かせました。この一番は、後にDVDマガジンにも収録され、舞の海の解説付きで紹介されています。

その後、幕下へ陥落しましたが、一度は十両に返り咲きました。しかし、再び幕下へ陥落し、1982年5月場所で現役を引退しました。現役生活では、102場所、930番を一度も休場することなく取り続けました。

引退後

引退後は年寄・山科を襲名し、出羽海部屋付きの親方として後進の指導に当たりました。その後、中立部屋（現在の境川部屋）に移籍しましたが、1999年夏頃に体調を崩し、緊急入院。2000年1月14日、多臓器不全のため、50歳でこの世を去りました。

主な成績・記録

通算成績：461勝469敗 勝率.496
幕内成績：48勝57敗 勝率.457
現役在位：102場所
幕内在位：7場所
十両優勝：1回（1973年9月場所）
幕下優勝：2回（1975年11月場所、1976年5月場所）
三段目優勝：1回（1970年5月場所）

四股名の変遷

吉谷（1965年7月場所-1967年9月場所）
宇戸の山（1967年11月場所-1968年9月場所）
吉の谷（1968年11月場所-1982年5月場所）

参考文献

『戦後新入幕力士物語 第3巻』（佐竹義惇著、ベースボール・マガジン社）

関連項目

大相撲力士一覧

外部リンク

* 吉の谷 彰俊 - 日本相撲協会

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