吉永猛

吉永猛：競馬界に刻まれた足跡

吉永猛氏は、1926年生まれの日本の元騎手、元調教師です。少年時代、近所の競馬場や駐屯地の軍馬に魅せられ、騎手を志しました。宮崎県尋常小学校卒業後、関係者の紹介で日本[[競馬会]]に入門。その後、京都[[競馬場]]の大久保亀治厩舎に移籍し、1943年に騎手見習いとしてデビューを果たします。

デビューから間もなく、第二次世界大戦の兵役につきます。広島の無線通信部隊に配属された吉永氏は、1945年8月6日、広島市への原子爆弾投下に遭遇。爆心地から離れた場所にいたため命は取り留めましたが、放射線の影響で体質が変化したと語られています。

戦後、1947年に騎手免許を取得して復帰。馬不足や賞金面での苦労を経験しながらも、1949年に小倉[[競馬場]]の渋川久作厩舎に移籍。主戦騎手として活躍し、1951年にはテツノハナで阪神3歳ステークスを制覇。これが吉永氏の重賞初勝利となりました。その後もシゲタカ、ライジングマサルなどで重賞を勝ち取り、騎手として通算276勝という輝かしい成績を残し、1965年に引退します。

騎手引退後、同年調教師に転身。阪神競馬場に厩舎を開業しました。当初は管理馬に恵まれませんでしたが、持ち前の指導力で着実に力をつけていきます。1972年にはワイエムチャイナで重賞初勝利を挙げて以降、数々の管理馬が活躍。特に「タマモ」の冠名で知られる三木道夫氏所有馬の主戦厩舎として名を馳せ、タマモアサヒ、タマモコトブキ、タマモリマンドといった馬を育成し、数々の重賞競走で好成績を残しました。

吉永厩舎は、タマモリマンドの母であるイコマエイカンの産駒を多く手がけました。その中には、小倉大賞典優勝馬グレイトファイターや、桜花賞で2着に入ったクインリマンドも含まれます。しかし、活躍するにつれて産駒の価格が高騰。吉永氏は「馬主に損をさせない」「安い馬で勝つ」という方針を掲げ、高騰した産駒は他の厩舎へと移っていきました。その中でも特に、アグネスレディーはオークスを制し、その血統からは孫世代まで三代連続クラシック優勝馬が誕生するなど、大きな成功を収めました。

調教師としての活躍は目覚ましく、1979年には調教技術賞を受賞。1981年には関西5位（全国6位）の勝利度数を記録し、1991年には自己最高の34勝を挙げました。そして1992年には、グレード制導入後初となるGI競走制覇をスエヒロジョウオーで達成。阪神3歳牝馬ステークスを制しました。晩年まで安定した成績を維持し続け、1999年に定年退職。調教師として7497戦670勝という素晴らしい成績を残しました。

吉永猛氏の功績は、勝利の数だけにとどまりません。数々の名馬を育成し、多くの後進を育成した指導者としての面も評価されています。弟子には、後に著名な調教師となる川村禎彦氏もいます。また、中央競馬騎手・調教師であった吉永忍氏は従弟にあたります。こうした人との繋がり、そして馬への深い愛情こそが、吉永氏の長く輝かしいキャリアを支えたと言えるでしょう。吉永猛氏の功績は、競馬史に深く刻まれた、かけがえのないものとなっています。

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