吉田実 (競輪選手)

競輪界の伝説、吉田実

吉田実（よしだ みのる）は、1934年5月1日に愛媛県西条市で生まれ、2016年8月20日に亡くなった元競輪選手です。自転車屋の息子として育ち、後に兄弟合わせて5人が競輪選手となるという自転車一家でした。登録地は愛媛から香川へ移し、観音寺競輪場をホームバンクとして活躍しました。選手登録番号は5568で、日本[[競輪選手養成所]]創設以前の期前選手です。

生い立ちと競輪界入り

幼い頃から自転車競技に親しみ、中学生時代には全日本アマチュア自転車競技選手権大会で優勝経験を持ちます。1948年に競輪が創設されたことをきっかけに、兄である吉田達雄が第一回小倉競輪に出走したことから競輪選手を志すようになりました。地元中学卒業後、1950年に愛媛県で選手登録し、競輪の世界に飛び込みました。

アマチュア時代から観音寺周辺を練習拠点としており、結婚を機に登録地を香川県に移し、正式に観音寺競輪場をホームバンクとしました。

ライバルとの切磋琢磨

デビュー後、吉田選手は順調に活躍し、1953年の競輪祭決勝で2着に入ったことで全国的な知名度を得ました。当時の競輪界は近畿地区の選手層が厚く、特別競輪（現在のGI）での優勝は難しい状況でした。そんな中、同世代の石田雄彦が次々とタイトルを獲得したことに刺激を受け、石田選手を目標に切磋琢磨しました。石田選手とのライバル関係は、競輪界を大いに盛り上げました。

伝説となった激闘

1958年、後楽園競輪場で行われた第13回全国争覇競輪（現・日本選手権競輪）決勝は、競輪史に残る大激闘となりました。吉田選手は逃げる作戦に出ましたが、最終直線で後方から突っ込んできた白井通義選手と接触、その影響で多くの選手が落車する大混乱となりました。しかし、吉田選手は落車しながらも前輪だけでゴールラインを通過し、奇跡的な優勝を果たしました。このレースは写真や記事として記録に残っており、現在も語り継がれる伝説となっています。

雪辱を誓った戦い

翌年の1959年の第14回全国争覇競輪決勝では、宿敵・石田選手に敗れました。その雪辱を期して臨んだ1960年の第15回同大会では、予選から全勝で決勝に進出しました。決勝当日、会場は観客で埋め尽くされ、スタンドに入りきれない観客がバンク内に入ってしまうという異例の事態となりました。レースでは、古田泰久選手が吉田選手をアシストし、見事優勝を飾りました。しかし、このレースの観客の状況を問題視した主催者は、翌年の開催を返上することになりました。

スプリントへのこだわり

競輪創生期はギア倍数が3倍程度でしたが、吉田選手は3.20から3.30という軽いギアを好んで使用していました。これは、世界のスプリンターが軽いギアを使用していることに影響を受けたためです。また、吉田選手は自転車競技にも力を入れており、世界選手権のスプリント種目にも3回出場しています。このスプリントへのこだわりは、後輩選手にも受け継がれ、中野浩一選手へとつながっていくことになります。

石田・吉田時代

吉田選手は石田選手と共に、競輪界第二期黄金時代を築きました。昭和30年代には、吉田選手が6回、石田選手が5回の特別競輪制覇を成し遂げました。その後、高原永伍選手が台頭するまでは、まさに二人の時代でした。1965年のオールスター競輪では、再び観客がバンク内になだれ込むという事態が起こり、当時のファンは、吉田選手と石田選手の復活に大きな期待を寄せていたことが伺えます。

不死鳥・鉄人

50歳の時に交通事故に遭い、選手生命の危機に瀕しますが、懸命なリハビリを経て競走に復帰しました。その不屈の精神から「不死鳥」「鉄人」と呼ばれるようになりました。通算1232勝という記録は、松本勝明選手に次ぐ歴代2位の記録です。

引退後

1994年に引退後は、日本名輪会のメンバーとしてファンとの交流を深めました。また、ホームバンクであった観音寺競輪場では、吉田選手の功績を称え『吉田実杯』が開催されました。2012年に観音寺競輪場が廃止された際、最終開催は『第18回吉田実杯』として行われ、吉田選手自身が競輪場の歴史に幕を引きました。その後、『吉田実杯』は高松競輪場に場所を移して開催されています。

主な獲得タイトルと記録

日本選手権競輪 - 1958年、1960年
オールスター競輪 - 1960年、1961年
全国都道府県選抜競輪 - 1962年、1963年
年間賞金王2回 - 1961年、1962年
通算成績 - 3425戦1232勝

関連項目

競輪選手一覧
* 石田雄彦

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