吉田清成

吉田清成：幕末から明治維新を駆け抜けた外交官、財政家

吉田清成（1845-1891）は、薩摩藩出身の外交官、財政家、そして子爵として、激動の時代を生き抜いた稀有な人物です。幼少期は巳之次、通称は太郎と名乗り、留学中は永井五百助と変名も使用しました。その生涯は、国際交渉や国内政策への貢献、そして数々の栄典と勲章によって彩られています。

輝かしい経歴：留学から国際舞台へ

1845年、薩摩藩士の四男として生まれた吉田は、慶応元年（1865年）、藩費留学生としてイギリスとアメリカに留学しました。当初は航海学を専攻していましたが、後に政治学と経済学へと転向し、その後の活躍の礎を築きます。明治3年（1870年）帰国後、大蔵省に入省し、租税権頭や大蔵少輔を歴任。金本位制導入を主張するなど、財政政策に積極的に関わりました。

明治5年（1872年）、外債募集のため渡米した吉田は、カリフォルニア銀行や著名な銀行家ジェイコブ・シフと交渉を行いました。しかし、秩禄処分への反対派である岩倉使節団との衝突がニューヨークの新聞で報道され、交渉は難航します。それでもシフは日本への融資に前向きであり、イギリスでの更なる協議のため、シフの代理人同行のもと渡英しました。ロンドンでは多くのオファーを受け、最終的にオリエンタル・バンクからの融資を受け入れることになります。翌年、年利7％で外債が発行され、その大半は準備金へと充当されました。

その後、アメリカ駐在公使に任命され、明治11年（1878年）には「吉田・エバーツ条約」締結に尽力します。明治12年（1879年）には、来日したアメリカ合衆国前大統領グラントの接待にもあたりました。帰国後は外務大輔に任命され、井上馨外務卿のもとで条約改正に取り組みました。その後、農商務大輔、初代農商務次官を歴任するなど、活躍の場は多岐に渡りました。

華族としての地位と晩年

明治20年（1887年）、子爵に叙された吉田は、元老院議官、枢密顧問官を歴任しました。しかし、47歳という若さで病死します。

彼の生涯は、数多くの手紙、日記、記録によって裏付けられています。これらの貴重な史料2700通は「吉田清成文書」として京都大学日本史研究室に保管され、後世の研究に役立っています。

吉田清成の遺産

吉田清成は、近代日本の外交と経済に多大な貢献をしました。彼の生涯は、留学経験、国際交渉、そして日本の近代化への熱意によって彩られています。彼の功績は、数々の栄典や勲章、そして彼が残した膨大な文書によって示されています。青山霊園にある墓所、鹿児島中央駅前に建てられた銅像など、今日でも彼の存在は記憶され、後世に語り継がれています。彼の残した「吉田清成文書」は、日本の近代化史を研究する上で、極めて重要な資料であり続けています。

参考文献

犬塚孝明著『薩摩藩英国留学生』中央公論社、1974年
千田稔「明治6年7分利付外債の募集過程 : 吉田清成らとロンドン金融市場」（『経済集志』第54巻第1号、1984年）
宇野健吾「戦前外債小史序 : 吉田清成のことども」（『筑波大学経済学論集』第17号、1986年）
山本四郎「明治八年の政治情勢 : 吉田駐米公使を通じて」（山本四郎編『近代日本の政党と官僚』東京創元社、1991年）
山本四郎「吉田・エバ-ツ協定の一考察 : 吉田清成関係文書による」（『史林』第76巻第6号、1993年）
『吉田清成関係文書』思文閣出版
田中智子「幕末維新期のアメリカ留学 : 吉田清成を中心に」（山本四郎編『日本近代国家の形成と展開』吉川弘文館、1996年）
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧[[華族家系大成]]』下巻、霞会館、1996年。

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