吉田長三郎

吉田長三郎：田中鉱山を支えた人物

吉田長三郎（1877年3月17日 - 没年不明）は、二代目・田中長兵衛の実弟であり、兄を支え田中鉱山株式会社の取締役を務めた人物です。

生い立ちと初期の経歴

1877年（明治10年）、吉田長三郎は官省御用達商人として軍需物資の調達を担っていた田中長兵衛の三男として、東京の京橋区に生まれました。兄や姉とは年が離れた末っ子であり、母方の吉田家を継ぎ吉田姓を名乗ります。慶應義塾幼稚舎から高等科へと進み、1897年（明治30年）に卒業した後、田中家の家業である鉱山業に携わることになります。

1901年（明治34年）11月に父・長兵衛が亡くなると、兄の安太郎が家督を相続し二代目・長兵衛を襲名しました。長三郎自身も明治三十七八年戦役に出征し、その功績により従六位、勲六等を授与されています。

田中鉱山株式会社での活躍

1917年（大正6年）4月、田中家の事業は個人経営から株式会社へと移行し、田中鉱山株式会社が設立されます。長三郎は監査役に就任し、2年後の1919年には取締役に昇進しました。当時、田中家は日本初の民間製鉄所を立ち上げ、国内鉄生産量の過半数を占めるほどの隆盛を誇っていました。

しかし、その後の戦後恐慌や関東大震災などの影響を受け、1924年（大正13年）3月に田中鉱山株式会社は経営破綻を迎えます。同年3月には実兄である二代目・長兵衛も病没し、田中家にとって苦難の時期となりました。

その後の人生

事業の破綻後も、吉田長三郎は社会との関わりを保ち続けました。1930年（昭和5年）には三男の勇吉が渡米し、サウスダコタ州立大学へ留学。同年、四男の康吉は横山長次郎の養子となります。長三郎は1932年（昭和7年）に設立された株式会社三松商店の監査役を務めました。

関東大震災後、芝区三田の田中長兵衛邸に住んでいた長三郎ですが、晩年には渋谷区氷川町へと居を移しています。

家族

妻・うた（1884年生）は森實氏の親族にあたります。長男の正は東京帝国大学経済学部と日本音楽学校を卒業後、東北帝国大学や日本音楽学校で講師を務めました。また、バリトン歌手としても活動し、女性合唱団を主催するなど音楽の世界で活躍しました。

二男の健吉は京都帝国大学経済学部を卒業後、野澤組や木下工業といった商社で要職を歴任しました。三男の勇吉はサウスダコタ州立大学を卒業後、農林省の通訳官を務めました。四男の康吉は横山家の養子となり、参松工業を継ぎました。また、長女の弘子は府立第六高等女学校を卒業しています。五男以下もそれぞれ社会に出て活躍しました。

吉田長三郎は、激動の時代を生き抜き、田中家の事業を支えながら、多才な子供たちを育て上げた人物でした。

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