吉良貞家

吉良貞家（きら さだいえ）

吉良貞家は、南北朝時代に活躍した武将で、初代奥州管領を務めました。三河国幡豆郡吉良荘を拠点とする奥州吉良氏（前期東条吉良氏）の3代目当主である吉良経家の嫡男として生まれました。生誕地は幡豆郡東条城と考えられていますが、この時期の詳しい記録は残っていません。

生涯

元弘の乱では、他の吉良一族とともに足利宗家に味方し、建武の新政期には足利尊氏の弟である直義に従って関東へ下向しました。1334年（建武元年）には関東廂番六番衆の第三番の頭人に任じられ、成良親王の警護を担当しました。この際、同じ一族の吉良満義も同僚として活躍しています。

南北朝の内乱が勃発すると、1335年（建武2年）の箱根・竹ノ下の戦いに参戦。その後、足利尊氏の本軍とは別行動をとり、1336年（建武3年）には尾張国・三河国を転戦しました。同年2月に三河矢作で軍を再編し、関東へ向かいます。関東では、鎌倉や下野国で南朝軍と戦い、苦戦を強いられました。足利尊氏が九州へ一時的に退却した後、反撃によって京を奪回すると、貞家も1336年8月頃に上洛し、本軍に合流しました。その後、因幡国・但馬国の守護職に任じられ、幕府評定衆や五番制引付方の二番頭人も歴任しました。

1345年（興国6年/康永4年/貞和元年）、畠山国氏とともに奥州管領に任命され、奥州国府に着任しました。奥州では、北畠氏などの南朝勢力と激しい戦いを繰り広げました。観応の擾乱では、足利直義方として畠山氏と対立し、1351年（正平6年/観応2年）には畠山高国・国氏親子を陸奥大仏城で自害に追い込みました。しかし、高師直、高師泰の軍勢が陸奥岩切城に援軍を送るという情報を受け、結城朝胤に白河関を守らせるなど、警戒を強めました。同年4月には、足利直義より、出羽国において円覚寺領を横領していた少輔与一に対する是正を指示されています。

1351年7月から11月にかけて、陸奥行方郡や山村城、高野郡などで沙汰を出しました。同年11月には、宇津峰宮（守永親王）との戦いで敗北し、伊具郡の伊具館に退却します。1352年（正平7年/文和元年）3月には、陸奥府中城に籠る南朝軍を攻め落としました。その後、陸奥の南朝勢力を宇津峰城に追い詰め、1353年（正平8年/文和2年）5月にはこれを陥落させました。

1354年（正平9年）以降、貞家の動向に関する記録は途絶えており、この頃に死去したと推定されています。

まとめ

吉良貞家は、南北朝時代という激動の時代において、足利尊氏に従い、各地を転戦した武将であり、初代奥州管領として奥州の安定に尽力しました。その生涯は、戦乱の世を生き抜いた武将の姿を今に伝えるものと言えるでしょう。

脚注

今谷明・藤枝文忠編『室町幕府守護職家事典（上）』新人物往来社刊（ISBN 4-404-01501-1 C1521）
『安城市史1　通史編　原始・古代・中世』安城市、2007年。
* 東京大学史料編纂所データベース『大日本史料』

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