奥州管領

奥州管領の歴史と役割

奥州管領（おうしゅうかんれい）は、南北朝時代から室町時代において、幕府の地方官制における重要な役割を担っていました。これは、守護に代わって設置された地方官であり、特に建武政権の時代に設立された陸奥将軍府に対抗するために、奥州総大将を前身にしています。

当時の日本はこの時期、南北朝の動乱に直面していました。貞和6年（1345年）、畠山国氏と吉良貞家が初めて奥州管領に任命され、この時に奥州総大将は廃止されました。彼らはそれぞれ尊氏・師直派と直義派に属しており、共同で政権を運営しましたが、軍事や民政の役割はさらにはっきりと分担されなかったのです。

奥州管領の職権は、軍事指揮権を中心に拡大しました。寺社興行権の保障や、棟別銭の賦課、さらには庶務や雑務の審理も行えるようになりました。また、奥羽の武士に対して管領府への勤番を徴発するなど、軍事指揮権が強化されていきました。この動きにより、以前は有力な武士に認められていた郡での使節遵行権が次第に管領府の手に移っていったのです。

観応2年（1351年）には、観応の擾乱が奥州まで波及しました。この際、吉良貞家は畠山国氏がこもる岩切城を攻撃しましたが、失敗に終わり、国氏は自害しました。しかし、その子である二本松国詮は二本松に移って奥州管領として活動を続け、その子孫はその地に定着しました。

畠山国氏の敗北によって、尊氏派の武士たちは失権し、その混乱を利用して南朝の北畠顕信が国府を奪取しました。吉良貞家が反撃を試みて国府を奪回しますが、文和2年（1353年）に彼は死亡し、その子の吉良満家が管領職を世襲しました。この時期には、奥州総大将の子である石塔義憲が奥州管領を名乗り、さらに斯波家兼も下向し、複数の管領が同時に名乗る「四管領時代」が到来しました。

この抗争の結果、各管領は地方の有力武士からの支持を得るために。郡地頭に検断権や使節遵行権を認めることになります。これにより、各武士は郡において強力な権力を持ち、「分郡」と呼ばれる支配領域を形成しました。このようにして奥州では国人の力が増大し、戦国大名にまで成長していく過程が始まりました。

しかし、奥州管領はその権限を再び強化できないまま、明徳3年（1392年）にはその地位を廃止され、奥羽は鎌倉府の管轄下に組み込まれました。これにより、幕府と鎌倉府との間に生じた対立が奥州探題の設立につながることになります。

鎌倉府に編入された後、上杉家が奥州管領に任じられ、上杉憲英・憲光父子がその地位を引き受けることになりました。これにより、奥州管領の歴史は新たな段階に移行しました。

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