吉野弘幸 (ボクサー)
吉野 弘幸（よしの ひろゆき）は、1967年8月13日生まれ、東京都葛飾区出身の元プロボクサーです。
卓越した強打、特に左フックを武器に、日本ウェルター級、日本スーパーウェルター級、そしてOPBF東洋太平洋ウェルター級の三つのタイトルを獲得しました。プロキャリアを通じて積み重ねたKO勝利数は多く、日本歴代4位タイとなる12連続KO勝利記録を樹立しています。
プロの世界に入ったのは中学校卒業後。運送会社で働きながらボクシングを始めましたが、時間の制約からジムを移籍し、最終的にワタナベボクシングジムに所属しました。この頃、生活費を稼ぐために始めた銀座のラーメン店でのアルバイトが、図らずも吉野の強力な左腕を鍛えることになります。毎日、右手に自転車のハンドル、左手に重い岡持ちを持って出前をこなすうち、その腕力が増強されていったのです。
1985年にミドル級でプロデビューしますが、連敗を機にウェルター級へ転向。東日本新人王戦では後の全日本新人王となる上山仁と引き分け、新人王獲得はなりませんでした。
転機が訪れたのは1988年3月21日。東京ドームで開催されたマイク・タイソン対トニー・タッブスの世界ヘビー級タイトルマッチのアンダーカードとして組まれた日本ウェルター級タイトルマッチです。当時、吉野は王者・坂本孝雄への挑戦者としてリングに上がりました。全てKO勝利という戦績を誇る坂本に対し、下馬評は圧倒的に不利でしたが、吉野は4ラウンドに鮮やかなKO勝利を飾り、王座を獲得。この番狂わせの勝利は、同年度の年間表彰でKO賞に輝きました。
日本ウェルター級王者として防衛を重ねる中、1991年12月9日には日本スーパーウェルター級王者だった上山仁とノンタイトル戦で再戦。新人王戦での引き分け、そして吉野の初防衛戦で上山が喫したキャリア唯一の黒星という因縁もあり、現役日本王者同士の対決として大きな注目を集めました。後楽園ホールは超満員となり、両者のファンによる熱狂的な応援合戦が繰り広げられる中、試合は予想通り壮絶な打ち合いとなりますが、7ラウンドに吉野がKO負けを喫し、上山に雪辱を許す結果となりました。この試合では、以前から不調だった鼻中隔彎曲症がさらに悪化し、後に治療が必要となりました。
1992年4月7日に行われた11度目の防衛戦では、デビュー以来11戦全KO勝利のホープ、佐藤仁徳を迎え撃ちました。この試合も大きな話題を呼び、佐藤の強打に押される場面も見られましたが、ブレイクからの再開直後、吉野が放った左フックが佐藤の側頭部を捉え、追撃によりレフェリーストップを呼び込みました。レフェリーの死角となるタイミングで放たれた一撃は、まさに百戦錬磨の吉野の経験が、無敗の勢いを上回った瞬間でした。
吉野は日本ウェルター級王座を14度連続で防衛した後、1992年12月21日に王座を返上しました。この14連続防衛という記録は、同級における最多記録であり、その中には8つのKO防衛が含まれています。
世界タイトル挑戦の機会を求め、1993年6月23日には階級を下げ、WBA世界スーパーライト級王者ファン・マルチン・コッジに挑みました。初回は得意の左フックで王者をロープに詰めるなど積極的に仕掛けましたが、様子を見ていたコッジが4ラウンドから攻勢に転じると、5ラウンドにあっという間に3度のダウンを奪われKO負けとなりました。
その後、OPBF東洋太平洋ウェルター級王座を目指し、1993年12月27日に王者・朴政吾に挑戦しますが、8ラウンドTKO負けに終わります。しかし、1995年11月28日、同王座を持つ朴奉寛に再挑戦し、12ラウンドの判定勝利で見事タイトルを獲得しました。
OPBF王座を2度防衛した後、1996年12月3日に尹錫玄に敗れて王座を失いました。
1997年、吉野は一時的にボクシング界を離れ、活躍の場をK-1に移します。当時、K-1は選手層強化のため、他競技からの選手獲得を進めており、吉野はボクシング界からの転向第一号的な存在でした。K-1デビュー戦ではKO勝利を飾り幸先の良いスタートを切ったものの、ヘビー級中心のK-1では吉野のスタイルが活かせず、結局K-1での試合は1試合に終わります。試合機会に恵まれなかったことや、所属していた全日本キックボクシング連盟の興行会社の倒産も重なり、ボクシング復帰を決意します。
しかし、JBCの規定では他のプロスポーツへの関与・従事はライセンス再交付の審査対象となるため、復帰には時間がかかりました。最終的には、野口ボクシングジムへの移籍という形で、異例のボクシング復帰が認められました。
1999年3月24日、ボクシング復帰第1戦でタタ・レガトゥナを1ラウンドKOで下し、健在ぶりを示しました。そして2000年9月11日、河合丈矢に10ラウンド判定勝ちを収め、日本スーパーウェルター級王座を獲得。これにより、自身2度目の日本タイトル獲得、そして2階級制覇を達成しました。
スーパーウェルター級王座は金山俊治を退け1度防衛しましたが、2001年6月11日に行われた河合との再戦に敗れ、王座を失いました。再度階級を上げた同年12月1日、日本ミドル級王者鈴木悟に挑戦しましたが、5ラウンドTKOで敗れました。
その後もリングに上がり5試合を行いましたが、板垣俊彦に敗れるなど4敗を喫し、往時の力は見られなくなっていきました。そして2004年、37歳の誕生日を迎えボクサーライセンスが失効したため、現役を引退しました。
引退後の2005年、吉野は故郷である葛飾区に自身のボクシングジム「エイチズスタイルボクシングジム」を開設し、現在は後進の指導にあたっています。
キックボクシングの戦績は非公表ですが、プロボクシングでの通算戦績は51戦38勝（29KO）11敗2分です。（BoxRec参照）
卓越した強打、特に左フックを武器に、日本ウェルター級、日本スーパーウェルター級、そしてOPBF東洋太平洋ウェルター級の三つのタイトルを獲得しました。プロキャリアを通じて積み重ねたKO勝利数は多く、日本歴代4位タイとなる12連続KO勝利記録を樹立しています。
プロの世界に入ったのは中学校卒業後。運送会社で働きながらボクシングを始めましたが、時間の制約からジムを移籍し、最終的にワタナベボクシングジムに所属しました。この頃、生活費を稼ぐために始めた銀座のラーメン店でのアルバイトが、図らずも吉野の強力な左腕を鍛えることになります。毎日、右手に自転車のハンドル、左手に重い岡持ちを持って出前をこなすうち、その腕力が増強されていったのです。
1985年にミドル級でプロデビューしますが、連敗を機にウェルター級へ転向。東日本新人王戦では後の全日本新人王となる上山仁と引き分け、新人王獲得はなりませんでした。
転機が訪れたのは1988年3月21日。東京ドームで開催されたマイク・タイソン対トニー・タッブスの世界ヘビー級タイトルマッチのアンダーカードとして組まれた日本ウェルター級タイトルマッチです。当時、吉野は王者・坂本孝雄への挑戦者としてリングに上がりました。全てKO勝利という戦績を誇る坂本に対し、下馬評は圧倒的に不利でしたが、吉野は4ラウンドに鮮やかなKO勝利を飾り、王座を獲得。この番狂わせの勝利は、同年度の年間表彰でKO賞に輝きました。
日本ウェルター級王者として防衛を重ねる中、1991年12月9日には日本スーパーウェルター級王者だった上山仁とノンタイトル戦で再戦。新人王戦での引き分け、そして吉野の初防衛戦で上山が喫したキャリア唯一の黒星という因縁もあり、現役日本王者同士の対決として大きな注目を集めました。後楽園ホールは超満員となり、両者のファンによる熱狂的な応援合戦が繰り広げられる中、試合は予想通り壮絶な打ち合いとなりますが、7ラウンドに吉野がKO負けを喫し、上山に雪辱を許す結果となりました。この試合では、以前から不調だった鼻中隔彎曲症がさらに悪化し、後に治療が必要となりました。
1992年4月7日に行われた11度目の防衛戦では、デビュー以来11戦全KO勝利のホープ、佐藤仁徳を迎え撃ちました。この試合も大きな話題を呼び、佐藤の強打に押される場面も見られましたが、ブレイクからの再開直後、吉野が放った左フックが佐藤の側頭部を捉え、追撃によりレフェリーストップを呼び込みました。レフェリーの死角となるタイミングで放たれた一撃は、まさに百戦錬磨の吉野の経験が、無敗の勢いを上回った瞬間でした。
吉野は日本ウェルター級王座を14度連続で防衛した後、1992年12月21日に王座を返上しました。この14連続防衛という記録は、同級における最多記録であり、その中には8つのKO防衛が含まれています。
世界タイトル挑戦の機会を求め、1993年6月23日には階級を下げ、WBA世界スーパーライト級王者ファン・マルチン・コッジに挑みました。初回は得意の左フックで王者をロープに詰めるなど積極的に仕掛けましたが、様子を見ていたコッジが4ラウンドから攻勢に転じると、5ラウンドにあっという間に3度のダウンを奪われKO負けとなりました。
その後、OPBF東洋太平洋ウェルター級王座を目指し、1993年12月27日に王者・朴政吾に挑戦しますが、8ラウンドTKO負けに終わります。しかし、1995年11月28日、同王座を持つ朴奉寛に再挑戦し、12ラウンドの判定勝利で見事タイトルを獲得しました。
OPBF王座を2度防衛した後、1996年12月3日に尹錫玄に敗れて王座を失いました。
1997年、吉野は一時的にボクシング界を離れ、活躍の場をK-1に移します。当時、K-1は選手層強化のため、他競技からの選手獲得を進めており、吉野はボクシング界からの転向第一号的な存在でした。K-1デビュー戦ではKO勝利を飾り幸先の良いスタートを切ったものの、ヘビー級中心のK-1では吉野のスタイルが活かせず、結局K-1での試合は1試合に終わります。試合機会に恵まれなかったことや、所属していた全日本キックボクシング連盟の興行会社の倒産も重なり、ボクシング復帰を決意します。
しかし、JBCの規定では他のプロスポーツへの関与・従事はライセンス再交付の審査対象となるため、復帰には時間がかかりました。最終的には、野口ボクシングジムへの移籍という形で、異例のボクシング復帰が認められました。
1999年3月24日、ボクシング復帰第1戦でタタ・レガトゥナを1ラウンドKOで下し、健在ぶりを示しました。そして2000年9月11日、河合丈矢に10ラウンド判定勝ちを収め、日本スーパーウェルター級王座を獲得。これにより、自身2度目の日本タイトル獲得、そして2階級制覇を達成しました。
スーパーウェルター級王座は金山俊治を退け1度防衛しましたが、2001年6月11日に行われた河合との再戦に敗れ、王座を失いました。再度階級を上げた同年12月1日、日本ミドル級王者鈴木悟に挑戦しましたが、5ラウンドTKOで敗れました。
その後もリングに上がり5試合を行いましたが、板垣俊彦に敗れるなど4敗を喫し、往時の力は見られなくなっていきました。そして2004年、37歳の誕生日を迎えボクサーライセンスが失効したため、現役を引退しました。
引退後の2005年、吉野は故郷である葛飾区に自身のボクシングジム「エイチズスタイルボクシングジム」を開設し、現在は後進の指導にあたっています。
キックボクシングの戦績は非公表ですが、プロボクシングでの通算戦績は51戦38勝（29KO）11敗2分です。（BoxRec参照）
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