名物かまど

「名物かまど」は、香川県坂出市を代表する和菓子であり、またその製造販売を手がける企業名（株式会社名物かまど）でもあります。古くから香川の土産菓子として広く認知されており、灸まんなどと並んで県内の主要な駅、百貨店、空港の売店などで手軽に入手できます。

この菓子は、小麦粉と卵を主原料とした薄い生地で、白インゲンマメの一種である手亡豆（てぼうまめ）と卵黄から丹念に作られた特製の黄味餡を包んだ、丸みを帯びた饅頭のような形状をしています。

「かまど」という名前、そして菓子の独特の形状は、坂出の地に古くから伝わる高僧・行基にまつわる伝説に由来します。天平年間のある時、行基が讃岐国阿野の海岸を訪れた際、塩づくりに苦労している乙女たちを見かけました。彼らのために行基は、土で竃（かまど）を作り、青松葉を燃料として塩を焼く方法を伝えました。この教えにより塩づくりが容易になった村人たちは大いに喜び、行基を称えたとされています。名物かまどの丸い形は、この伝説に登場する竃をモチーフとして生み出されました。

名物かまどを製造販売する株式会社名物かまどは、1936年（昭和11年）に「荒木屋」として創業した歴史ある菓子メーカーです。現在では香川県内に17の直営店舗を展開しており、地域に根差した企業活動を行っています。企業の公式キャラクターである「かまどちゃん」は、愛らしい姿で親しまれています。

特に香川県と岡山県では、テレビコマーシャルを通じて広く知られています。このCMには、シンガーソングライターの中西圭三氏が作曲した印象的なCMソングが使用されており、多くの住民にとって非常に馴染み深い存在です。過去には、人気アニメ「まんが日本昔ばなし」で知られる名ナレーター、市原悦子氏と常田富士男氏が声の出演をしたことでも話題となりました。また、かつて西日本放送ラジオで放送されていた協賛番組「かまどサロン 私の観た香川」では、以前のイメージCMソングがエンディングテーマとして流れていました。ちなみに、創業時の商号であった「荒木屋」は、現在では不動産賃貸業を営む関連会社（有限会社荒木屋）として存続しています。

名物かまどは同社の代表的な商品ですが、他にも幅広い種類の和菓子や洋菓子を製造販売しています。主な和菓子としては、名物かまどのほか、虎饅頭、亀甲、かまど最中、かまど羊羹などがあります。洋菓子としては、ブッセ、フランソワ、かまどパイ、パイ饅頭、シュークリームなどが人気を集めています。

同社はラジオ番組への協賛のほか、近年では日清食品のカップヌードルCM「地元から沸かせ！岡山・香川 篇」（2020年より放送）にて、同社のテレビCMが元ネタとしてパロディ化されるなど、様々な形でメディアへの露出機会を得ています。

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