名神湾岸連絡線

名神湾岸連絡線（めいしんわんがんれんらくせん）は、兵庫県西宮市内に整備が進められている重要な地域高規格道路です。

この路線は、日本の高速道路ネットワークの主要幹線である名神高速道路と、大阪湾岸地域を結ぶ阪神高速道路5号湾岸線をダイレクトに接続することを目的としています。行政上の名称は「一般国道43号 名神湾岸連絡線」とされており、現在は国土交通省による国の事業として着実に整備が進められています。

事業化までの道のり

名神湾岸連絡線の構想自体は以前からありましたが、具体的な計画の推進が加速したのは2010年代に入ってからです。国土交通省は、この道路が地域交通にもたらす効果や、早期整備の必要性・緊急性について、2012年度から詳細な調査を開始しました。

調査の結果、この路線が阪神地域の慢性的な交通渋滞の緩和や、大阪湾岸部の港湾・物流拠点と内陸部を結ぶ物流ネットワークの効率化に不可欠であるとの認識が高まりました。2013年には国土交通大臣がその重要性を公的に言及し、同年8月には道路の構造やルートに関する計画段階評価が実施され、具体的な計画の方向性が定められました。

2018年3月に開催された関係機関の協議会では、さらに詳細な計画案が示されました。道路は主に高架構造で建設され、各方向1車線ずつの合計2車線となること、阪神高速5号湾岸線とは西宮浜地区で双方へ接続可能とすること、西宮浜に連絡線専用の新たな出入口を設けること、そして名神高速道路との接続点である西宮ジャンクションでは、阪神高速3号神戸線の大阪方面とも接続する構造とすることが決定されました。これらの詳細計画に基づき、2018年度からは都市計画決定や環境への影響を評価する手続きが進められ、関係する許認可の取得に向けた準備が進められました。これらの準備段階を経て、名神湾岸連絡線は2021年度に正式に国の事業として採択され、建設段階へと移行しました。

計画概要と事業方式

事業化された計画によると、名神湾岸連絡線の総延長は約2.7キロメートルです。道路は片側1車線の計2車線構造として設計されており、想定される設計速度は時速60キロメートルです。この路線の整備に必要となる全体事業費は、およそ1,050億円が見込まれており、開通後の1日あたりの計画交通量は約17,000台と予測されています。

事業の実施にあたっては、資金調達や運営の効率化を図るため、2024年度から有料道路事業が導入されることが決定しました。これにより、国の公共事業と有料道路事業を連携させて整備を進める「合併施行方式」が採用されます。事業を分担する有料道路事業者としては、名神高速道路との接続部を含む西宮ジャンクション付近の区間を西日本高速道路株式会社（NEXCO西日本）が担当し、それ以外の区間については阪神高速道路株式会社が担当することが定められています。これにより、両社の持つ高速道路建設・運営のノウハウを活かした効率的な事業推進が期待されます。

接続する主な道路

名神湾岸連絡線は、以下の主要な高速道路網と接続することで、関西圏における道路ネットワーク全体の機能強化に大きく貢献します。

E1 名神高速道路: 西宮ジャンクション（西宮IC/JCT）で直接接続します。これにより、日本の大動脈である名神高速道路と大阪湾岸地域が直結され、東西方向の交通と湾岸方面へのアクセスが大幅に向上します。
阪神高速3号神戸線: 西宮ジャンクションで接続します。神戸都心部や西方面、そして大阪方面へのアクセスが向上し、特に名神・阪神高速間の乗り換えの利便性が高まります。
* 阪神高速5号湾岸線: 西宮浜ジャンクション（西宮浜出入口/JCT）で接続します。大阪湾岸部から神戸方面、または関西国際空港方面へのアクセスが改善され、臨海部の交通ネットワークが強化されます。

これらの接続により、名神湾岸連絡線は阪神間の都市間交通や港湾・空港アクセス、さらには広域物流において、新たな選択肢を提供し、既存道路の交通負荷軽減に寄与することが期待されています。

現在、名神湾岸連絡線は事業中の段階であり、具体的な完成・供用開始時期については発表されていません。しかし、その完成は阪神間の交通体系に大きな変化をもたらすものとして、関係各所から高い期待が寄せられています。

もう一度検索